沙鉢羅咥利失可汗

沙鉢羅咥利失可汗（イシュバラ・テリシュ・カガン）

沙鉢羅咥利失可汗（? - 639年）は、7世紀の西突厥の可汗であり、阿史那氏を фамилия（姓）とします。可汗号である沙鉢羅咥利失可汗は、「Ϊšbara teriš qaγan」と表記されます。

生涯

即位と唐との関係

貞観8年（634年）、兄である咄陸可汗（トゥロク・カガン）の死後、同娥設（トンガ・シャド）の官職にあった彼は、沙鉢羅咥利失可汗として即位しました。

貞観9年（635年）、彼は唐に結婚を申し込み、馬500頭を献上しましたが、唐朝はこれを許可しませんでした。これは、当時の国際関係における駆け引きの一環であったと考えられます。

部衆の離反と勢力回復

しかし、沙鉢羅咥利失可汗は部衆を掌握できず、離反が相次ぎました。統吐屯（トン・トゥドゥン）の襲撃を受け、麾下の兵は散り散りになりました。彼は百騎余りで抵抗しましたが、最終的に弟の歩利設（ボリ・シャド）のもとに逃れ、焉耆国に立てこもりました。

その後、阿悉結（アスケール）部の闕俟斤（キュル・イルキン）らが欲谷設（ユクク・シャド）を大可汗として擁立しようとしましたが、統吐屯が殺害され、欲谷設の軍も破れたため、沙鉢羅咥利失可汗は再び勢力を回復し、弩失畢部や処密部などが帰順しました。

乙毘咄陸可汗との対立と領土分裂

貞観12年（638年）、西部では欲谷設が乙毘咄陸可汗（イルピ・トゥロク・カガン）として擁立され、沙鉢羅咥利失可汗との間で大規模な戦闘が発生しました。この戦いで両軍は大きな損害を出し、最終的に撤退しました。

これにより、西突厥は沙鉢羅咥利失可汗と乙毘咄陸可汗の二つに分裂し、伊麗河（イリ川）を境に、以西は乙毘咄陸可汗、以東は沙鉢羅咥利失可汗の勢力下となりました。乙毘咄陸可汗は首都を鏃曷山の西に置き、北庭としました。

晩年と死

貞観13年（639年）、沙鉢羅咥利失可汗の吐屯俟利発（トゥドゥン・イルテベル）が乙毘咄陸可汗と内通して造反したため、彼は抜汗那（フェルガナ）国に逃れましたが、そこで亡くなりました。

彼の死後、弩失畢部落の酋帥は沙鉢羅咥利失可汗の弟の伽那（カーナー）の子である薄布特勤を迎え、乙毘沙鉢羅葉護可汗（イルピ・イシュバラ・ヤブグ・カガン）として擁立しました。

沙鉢羅咥利失可汗の生涯は、西突厥の内紛と対外戦争に翻弄されたものであり、彼の死後も西突厥の混乱は続きました。

参考資料

『旧唐書』（列伝第百四十四下 突厥下）
『新唐書』（列伝百四十下 西突厥）
佐口透・山田信夫・護雅夫訳注『騎馬民族誌２正史北狄伝』（1972年、平凡社）
内藤みどり『西突厥史の研究』（1988年、早稲田大学出版部、ISBN 4657882155）

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