沙頭角口岸

沙頭角口岸（シャータウコウガン）

沙頭角口岸は、中華人民共和国広東省深圳市塩田区と香港特別行政区新界の間に位置する出入境検査場です。香港と中国本土の境界の東端、沙頭角海に面した場所に設置されています。

概要

この口岸は、かつては多くの旅行者が利用していましたが、現在は貨物輸送が主な役割となっています。通過する旅行者は少なくなっており、物流の要としての機能が重視されています。開場時間は、旅客が午前7時から午後8時まで、貨物は午前7時から午後10時までです。しかし、2024年現在、旅客の通行は制限されており、貨物車両のみが通行可能です。

交通手段

香港から沙頭角口岸へ向かうには、主に越境バスを利用します。九龍塘駅などから発着するバスが便利です。九龍塘駅の乗車券売り場には両替商もあるため、事前に人民元に両替しておくとスムーズです。

バスは、まず香港側の事務所で一旦下車し、香港の出国手続きを行います。その後、沙頭角口岸に到着し、バスを降りて中国への入国手続きを行います。国境を跨ぐため、中国入国後にバスに忘れ物をしても取りに戻ることはできません。注意が必要です。

また、粉嶺駅からもバスが出ていますが、朝夕の限られた時間帯以外は駅から離れた場所が乗り場となるため、旅行者の利用にはあまり向いていません。

香港へ向かう場合は、越境バスの乗車券を購入後、中国の出国手続きを済ませてバスに乗車します。その後、少し進んだところで香港の入国手続きのために再び下車します。香港の出入国手続きでは税関検査があるため、手荷物を持って降りる必要があります。盗難防止のためにも、手荷物は常に身につけておくようにしてください。

沙頭角口岸は地元客の利用が多いため、バス車内の案内は広東語のみです。トラブルを避けるためにも、事前にバスの利用方法を確認しておくことを推奨します。

歴史

沙頭角口岸は、1984年に中華人民共和国国務院によって開放が決定され、1985年3月から供用が開始されました。2005年 1月28日には、新たな国境橋梁が完成しました。この口岸は、通常の旅行者や貨物輸送だけでなく、香港との遺体搬送拠点としても機能しており、華僑墓園に埋葬される香港人の遺体は、この口岸を通じて通関されています。

2020年には、香港政府の決定により国境が一時的に閉鎖されましたが、2023年2月6日より貨物輸送に限定して運用が再開されました。ただし、旅客の利用は、中国側の再開発事業のため、現在も中止されています。

制限区域

沙頭角口岸に隣接する沙頭角地区は、1951年に当時のイギリス領香港政府が中国側からの不法越境を防ぐため、辺境禁区として立入禁止区域に指定しました。しかし、香港北部の経済振興を目的として、2022年6月3日から団体旅行に限り試験的に開放され、2024年1月1日からはネットでの事前申請による個人観光も解禁されました（ただし、「中英街」は対象外です）。香港返還後の状況安定に伴い、制限区域は2012年から段階的に縮小されてきました。

通常、制限区域への立ち入りには許可証（香港では「禁区紙」と呼ばれる）が必要ですが、香港と中国を行き来するバスでの通過に限っては許可証は不要です。

中国側や香港側から制限区域に入るための検問所は、沙頭角口岸とは別に設けられています。この地区は、境界線が街の中に引かれており、地区内でのみ自由に香港側と中国側への往来が可能です。かつては、中国で入手困難な西側諸国の製品や金を買い求める人が多く訪れていましたが、香港への直接渡航が可能になった現在では、「中英街歴史博物館」など、愛国教育の拠点としての役割を担っています。

香港市民でも許可証を得るには特別な条件が必要であり、中国側でも一定の条件を満たした自国民のみに日帰り観光許可が与えられています。そのため、日本人を含む外国人旅行者が制限区域内を観光することはほぼ不可能とされています。ただし、香港側からは中英街を除く沙頭角地区に限り、香港を訪問中の外国人観光客を含む観光目的での立ち入りが可能になりました。

沙頭角口岸