沢渡氏

沢渡氏の歴史

沢渡氏（さわどうじ）は、日本の著名な氏族であり、平姓仁科氏の一党として存在しました。安曇郡に拠点を構えており、現在の白馬村付近がその中心地となっていました。この一族は中世の不明な時期に仁科家から分かれ、姫川沿いに位置する三日市場城を居城としたと考えられています。

応永7年（1400年）には、大塔合戦において仁科氏に従って参戦した沢渡五郎が記録に残っています。室町時代の後期には、沢渡盛利という人物がその名を知られるようになります。彼は武勇に優れ、沢渡家の勢力を拡大し、また神仏への深い帰依も持ち合わせており、沢渡氏の中興の祖とされています。

時が経つにつれて、戦国時代が訪れると、安曇郡でも甲斐武田氏の影響が強まります。天文年間の後期には、仁科家が武田家に臣従する一方で、一部の仁科氏の親族は武田氏に対して反乱を起こし滅ぼされる運命にありました。この時期、沢渡氏の子孫である盛辰と盛賢（または盛則）が活躍していましたが、盛辰は二重城で討死し、盛賢は武田氏の麾下において武勇を発揮しました。盛賢は、永禄年間に生島足島神社の起請文に名前を残したことから見ても、歴史的な人物と言えるでしょう。

さらに、武田氏から恩賞として仁科民部入道が馬五匹分の税免除を受けた記録もあり、この民部入道が沢渡氏一族に比定されるほどの関連性が認められます。

盛賢（盛則）は、元亀元年（1570年）の武田信玄の駿河侵攻に際して、花沢城攻めに動員されました。しかし、この戦闘は非常に激しく、家臣の万沢氏も討死する中、盛則もまた命を落としました。この戦いの後、沢渡氏の家督は盛忠に引き継がれました。彼に関する記録としては、信濃国の武将宇治久家による日記にその名が見られます。

天正10年（1582年）には、甲州征伐で武田氏が滅亡し、同じ年に本能寺の変が起きることにより、信濃国内は混乱の渦に飲まれました。盛忠はまず上杉景勝に仕官しましたが、後に小笠原氏に仕官を変え、同年9月19日には所領を安堵されました。しかし、翌年の天正11年（1583年）には捕まる事態に見舞われました。盛忠はその後釈放され、小笠原家臣として安曇郡北方で上杉氏との攻防戦を繰り広げることになりました。

また、天正16年（1588年）には、沢渡神明社の社殿が沢渡氏によって造営されるなど、安土桃山期には信濃国で活発に活動を続けました。しかしその後、小笠原家の古河藩への転封に伴い安曇郡を去り、小笠原家の九州小倉への移封に付き従い、最終的には小倉藩士として江戸時代を生き抜きました。これにより、沢渡氏はその歴史を刻み続けたのです。

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