河内職

河内職とその背景

河内職（かわちのしき）は、日本の古代における律令制度の一環として位置づけられる行政機関であり、その設置は奈良時代における称徳天皇の治世にさかのぼります。この組織は河内国において、司法、行政、警察などを担当し、その重要性は当時の政治体制における地域統治のあり方を示しています。

由義宮の設置

由義宮は、『続日本紀』によると、天平神護元年（765年）10月に称徳天皇が行幸した際に設立された弓削行宮が前身とされています。この行宮は、現在の大阪府八尾市に位置し、その後「西京」として知られるようになりました。西京は、奈良の都に対抗する形で設置され、陪都としての役割が強調されていたと考えられています。

西京の設立は、天平宝字5年（761年）に近江国の保良宮が「北京」と称されたことに対抗したもので、地理的にも河内国の大県郡、若江郡、高安郡から安宿郡、志紀郡の一部までに広がっています。このように、由義宮と西京の設置は、河内国における政治的な重要性をますます高める要因となりました。

河内職の設置と機能

神護景雲3年（769年）10月には、河内国が正式に河内職として位置づけられ、大夫（長官）、亮（次官）、大・少進（判官）といった官職が設けられました。これに伴い、任命された官吏たちには、それぞれの役職に応じた位階が与えられました。特に、大夫には正五位上に相当する摂津職よりも高い地位が与えられており、河内職が持つ権限や影響力を示しています。

この時の河内大夫には、藤原雄田麻呂が留任しており、彼は河内守としての任務も担っていました。次官には紀広庭が就任し、大進には河内三立麻呂、少進には高安伊可麻呂が選ばれました。これらの任命は、河内職の行政効率を高め、地域統治を強化するためのものでした。

称徳天皇の行幸と政治活動

称徳天皇は、その後神護景雲4年（770年）に2月27日から4月26日まで由義宮に行幸しています。この期間中、天皇は様々な政治的活動を行い、新羅からの使節を迎え、その目的を尋ねたり、物品の贈与や官位の任命を行ったりしました。これにより、西京は実質的な首都としての役割を果たすこととなったのです。

行幸中には京の各地から多くの人々が参加し、特に、歌垣の行事には230人もの男女が集まり、五位以上の人々もその中に招かれました。このような行事は、地域の文化を奨励し、また天皇と国民との結びつきを強化するための重要な機会となっていました。しかし、天皇はこの期間中に体調を崩し、その影響で平城宮に戻ったあと100日間も政務に従事できなくなる事態となりました。

結末と河内職の復活

同年8月、称徳天皇は平城宮の西宮において崩御し、その後に白壁王（後の光仁天皇）が皇太子に選ばれました。この出来事を契機に、河内職は再び河内国に置かれることが決定されました。そして、10月には年号が宝亀と改元され、河内職による地域行政が新たな局面を迎えることとなります。

このように、河内職は奈良時代における重要な行政機関として、地域の統治や文化的行事を通じて、その役割を果たしました。

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