河口荘

河口荘の概略

河口荘（かわぐちのしょう）は、平安時代の末期から戦国時代まで存在した、越前国坂井郡の荘園です。この荘園は、主に興福寺大乗院門跡がその支配権を持っていました。その名称の由来は、「和名抄」に記載されている坂井郡の川口郷にあることに由来しています。

河口荘は、本庄郷、新郷、王見（大味）郷、兵庫郷、大口郷、新庄郷、関郷、溝江郷、荒居郷、細呂宜郷の10の郷で構成されています。中世を通じ、興福寺大乗院門跡が管理する北国荘園として重要視されていました。特に、越前国の坪江荘と共に、経済基盤としての役割を果たし、両荘園は興福寺の重要な支えとなっていました。

室町時代には、大乗院門跡が管轄する「毎日不退一切経」という大規模な行事にかかる費用が河口荘から支出されていたことが知られています。また、経覚という門跡が自身のために河口荘の細呂宜郷西北部の収入状況を記録しており、これが「細呂宜郷下方引付」として残されています。このように、河口荘は興福寺において実務上重要な荘園であったことが示されています。

支配構造と年貢

河口荘の支配体制は、門跡が就く「検校」が最上位に位置し、その下に「給主」と「奉行」がいました。さらに、給主以下では現地の実務を担当する「職人」や「政所」と呼ばれる役職が存在しました。興福寺が直接寺官を派遣する直務方式と、幕府や地元の有力者に請け負わせる方式がとられていました。

年貢の内容には、米や代金だけでなく、絹や綿、麻からなる苧、さらには乾燥させた糒や油なども含まれており、多岐にわたりました。これによって、河口荘は経済的な自立を果たしていたことがわかります。

歴史的背景

平安末期から鎌倉時代

河口荘の歴史は、康和年間（1099年 - 1104年）に白河上皇が春日社へ寄進したことから始まります。この荘園は、当地を開発した藤原利仁の一族によって管理されていました。支配者である検校には、大乗院本願法印隆禅が任命され、その後、河口荘の支配はこの職に結びついていました。13世紀初めまでは、検校職は興福寺内部の特定の院家から相承されることはありませんでしたが、後鳥羽上皇の時代に変化が起こりました。

南北朝時代

南北朝時代には、武士による押領が河口荘で頻発し、事態はさらに悪化しました。大乗院門跡は、この地域の安定を保つために様々な手段を講じていましたが、斯波高経などが関与した押領問題は波乱の要因となりました。

室町時代

室町時代に入ると、河口荘は依然として大乗院門跡の経済的基盤であり続けました。しかし、15世紀に入ると、大乗院の直接支配が縮小し、地元の代官が支配者となるケースが増えました。この時期、越前国の内紛や飢饉が河口荘の経済に影響を与えました。

戦国時代

戦国時代、朝倉氏の滅亡後、河口荘は一向一揆によって支配されるようになりました。朝倉氏の滅亡の結果、河口荘は大乗院の支配から遠ざかり、荘園としての役割を終えていくこととなります。これにより、河口荘の歴史は一旦の幕を下ろした形となりました。

河口荘の歴史は、時代の変遷に伴う荘園制度の変化を如実に示しており、当時の社会状況を映し出しています。

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