河姆渡文化

河姆渡文化について

河姆渡文化（かぼとぶんか）は、中国の浙江省における新石器時代の文化で、紀元前5000年頃から紀元前4500年頃にかけて栄えていました。この文化は杭州湾南岸から舟山群島にかけて広がり、特に余姚県にある河姆渡遺跡の発見によりその存在が明らかになりました。

河姆渡遺跡の発見と意義

河姆渡遺跡は1973年に発見され、その後1973年から74年、1977年から78年にかけて大規模な発掘調査が行われました。この遺跡からは大量の水稲のモミが発見され、これが世界最古の稲作の証拠とされています。遺跡から見つかった他の植物には、ヒョウタン、ヒシ、ナツメ、ハス、ドングリ、豆などがあり、当時の人々が多様な作物を栽培していたことが示されています。

また、遺跡からはヒツジやシカ、トラ、クマ、サルなどの野生動物に加え、ブタやイヌ、スイギュウなどの家畜も発見されました。これにより、彼らの日常生活や食生活が垣間見えます。

工芸と技術

河姆渡文化では、干欄式建築（高床建物）が広く用いられており、これらの建物は湿度の高い環境に適した住居構造となっています。遺物には、磨製石器や装飾品、木器や骨器などが多く見つかり、中でも「木雕魚」は中国最古の木製装飾物とされています。

また、農業に関連する道具として肩甲骨製の耜や刀、矢じり、紡錘、針などが見つかっており、これらは農作業や繊維加工に使用されていたと考えられます。さらに、骨でできた笛や木製の太鼓も発見されており、音楽や儀式に使用されていた可能性もあります。特に漆器の発見は、中国における漆器作りの歴史に重要な意味を持っています。

河姆渡文化では、黒陶、紅陶、紅灰陶など、様々な色合いの陶器が製作され、高温焼成技術がもたらした高い技術レベルを示しています。これらの陶器には幾何学模様や植物のデザインが施されており、土器の中には人間の頭部や船を模したものも含まれています。

社会と環境の関係

河姆渡文化は、タイ湖周辺や杭州湾北部に分布する馬家浜文化と同時期に栄えていました。これらの文化は異なる特徴を持ちながらも、互いに影響を与え合っていたとされています。また、洪水などの自然災害の影響も受けたことが遺跡からの証拠によって示されています。

近くを流れる姚江は度々洪水を引き起こし、その影響で遺跡が放棄されたと見られています。微生物や花粉の分析によって、河姆渡文化は完新世の気候最温暖期に栄えたことが分かっています。この時期、杭州湾の海面水位は比較的低く安定していましたが、やがて頻繁に氾濫が起こるようになります。

高床式の住居は、高温多湿の気候に適応した建築であることを物語っています。「河姆渡文化」は、単なる考古学的遺産にとどまらず、古代中国における農業の発展や社会構造、環境との関係を探る貴重な文化的遺産と言えるでしょう。

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