河東の乱

河東の乱について

河東の乱（かとうのらん）は、戦国時代の天文6年（1537年）から天文14年（1545年）の間に駿河国、現在の静岡県中部および東部で発生した戦闘を指します。この争いは主に今川氏と北条氏の間で繰り広げられました。この乱は、一般的には「河東一乱」とも称され、争奪の対象となった地域を指して「河東」と呼ばれています。この地域は武田家、今川家、北条家の三国が隣接している富士川から黄瀬川までの範囲で、ここにあたる特色ある土地を、これらの勢力が河東郡と呼称しました。ただし、公式にはこの名称の郡は存在せず、実際には駿東郡と富士郡の一部から構成されていました。三家はこの地域を必要に応じて呼称したに過ぎないのです。

背景

河東の乱の背景には、今川氏の内部での権力争いが存在しました。今川義忠の死後、家督を巡る争いが生じ、その遺児である龍王丸（後の今川氏親）の後見人として伊勢盛時（北条早雲）が立ちました。盛時はその功績により、駿河国の一部を与えられ、興国寺城を手に入れたとされています。しかし、盛時の行動は今川氏親にとって許容できないもので、両者の認識がずれていくこととなります。特に、盛時の独自な軍事行動や勢力拡大は今川氏との関係をさらに複雑にしました。これが後の対立の火種となるわけです。

亀之丞の死後、氏親は外敵である武田氏との抗争を続けていました。その中で今川の権力基盤は実際には脆弱なものとなっていったのです。また、伊勢盛時の没後、その息子氏綱が家督を継いだことにより、今川との主従関係も次第に崩れていきました。以降、氏綱は独自の行動を取り始め、武田氏との関係が複雑化しました。

花倉の乱と甲駿同盟の成立

天文5年（1536年）、今川家当主の氏輝とその弟が急死すると、家中が混乱を来し、花倉の乱が発生しました。この動乱の中で、氏輝の正室が栴岳承芳を追い立て、家老である福島氏らとの抗争が始まりましたが、北条氏の支援を受けた承芳派が勝利を収め、彼は義元と名乗ることになります。翌年の天文6年には、今川義元が武田信虎の娘を迎え、甲駿同盟が成立しました。この同盟は、武田氏との連携を模索する今川氏の意向を反映していました。

第一次河東一乱

甲駿同盟の成立以降、北条氏綱は駿河へ侵攻を開始します。義元は彼らを退けようとしましたが、北条軍は早々に河東地域を占拠しました。氏綱はその後遠江の有力者たちと連携し、今川を挟み撃ちにする形で攻撃を続け、連合軍は大敗を喫しました。この泥沼のような状況は、今川氏にさらなる不信感をもたらしました。

北条氏と武田氏の和睦

その後、天文10年（1541年）に武田信虎が追放されると、嫡男の晴信が当主となり、彼が信濃侵攻を開始する一方、北条氏も氏康が家督を継承し、河東での今川氏との対峙を続けました。両者の間にはやがて和睦の動きが見え、天文13年（1544年）には彼らの間で和議が結ばれ、甲相同盟が成立しました。

第二次河東一乱

天文14年（1545年）、今川義元は北条氏に奪われた河東地域の奪還を目指して行動を開始します。義元は南北の二つの方面から包囲網を築き、北条軍との激しい戦闘が繰り広げられました。先手を打った義元は北条軍を圧倒し、長久保城を奪回します。この攻撃により北条氏は大きな損失を被りました。

甲相駿三国同盟の成立

このように、河東の亂は一時的に和平を迎え、今川氏は遠江の平定、北条氏は北関東侵攻に専念する機会が得られました。やがて、双方の不信は残っているものの、天文21年（1552年）には三国同盟の成立を迎え、しばらくの平穏を確保します。

第三次河東一乱

後に北条氏の軍記では、1554年に再度の侵攻があったと記されますが、具体的な記録や証拠が確認できず、研究者による見解でも否定的な意見が多く見られます。河東の乱を取り巻く情勢は極めて複雑で、多くの人々の運命が交錯した歴史的な出来事です。これに関しては、今川氏、北条氏、武田氏の関係がどのように変遷していったかを考察する必要があるでしょう。

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