河目悌二

河目悌二：童心を描いた画家

河目悌二（かわめ ていじ、1889年8月6日 - 1958年4月23日）は、大正から昭和にかけて活躍した日本の画家であり、童画と商業美術の世界で独自の足跡を残しました。愛知県碧海郡刈谷町（現在の刈谷市）に生まれ、初山滋、岡本帰一、川上四郎、武井武雄らと共に「童画の第一世代」の一人として名を連ねています。教育者であった父、河目正平の影響を受けながら育ちました。

生い立ちと教育

1889年、河目は刈谷の地で生を受けました。父は刈谷藩の藩校である文礼館で教鞭を執っており、教育熱心な家庭環境で育ちました。幼少期に父を亡くすという経験をしましたが、向学心を失うことなく、刈谷尋常小学校、亀城高等小学校を経て、愛知県立第二中学校（現在の愛知県立岡崎高等学校）へと進学しました。

1908年、河目は東京美術学校（現在の東京藝術大学）西洋画科予備科に入学するために上京します。入学試験で初めて木炭画に挑戦したというエピソードは、彼の芸術に対する天性の才能を示していると言えるでしょう。本科に進学後は、平澤文吉、牧野虎雄、三宅鏙吉、川上四郎、栗原誠らと切磋琢磨し、藤田嗣治や萬鉄五郎といった先輩たちから刺激を受けました。大正デモクラシーの波が押し寄せる中、ポスト印象派などの新しい芸術思潮に触れ、自身の表現を追求していきました。

挿絵画家としての才能開花

1913年に東京美術学校を卒業後、兵役を経て、河目は挿絵画家としての道を歩み始めます。東京美術学校の同期であった平澤文吉、川上四郎らと共同生活を送りながら、二葉社の絵雑誌『トモダチ』で子供向けの挿絵を描く仕事を得ました。この頃から、彼の描く子供たちの愛らしい表情や、温かみのある色彩が多くの人々を魅了し始めます。

1920年、河目は小林商店（現在のライオン）に入社し、広告部図案係として才能を発揮します。ここでは、商品の広告デザインなどを手がけ、商業美術家としてのスキルを磨きました。また、1921年には松崎みさをと結婚し、家庭を築きました。みさを自身も女子美術学校で学んだ経験を持ち、河目の芸術活動を支える良き理解者でした。

小林商店では、広告部が京橋区山城町（現在の中央区銀座）に移転したことを機に、コドモ社の『良友』で表紙絵画家に抜擢され、子供たちの夢と希望を描き続けました。杉並区に居を構えてからは、近所に住む芸術家仲間たちと作品の批評会を開き、互いに刺激し合いながら創作活動に励みました。

童画の世界へ

河目の作品は、子供たちの無邪気な笑顔や、夢と希望に満ちた世界を色彩豊かに描き出している点が特徴です。彼の描く子供たちは、いきいきとした表情で、見ている人々に温かい気持ちを与えてくれます。太平洋戦争中も、児童誌の挿絵画家として積極的に活動し、講談社『少年倶楽部』やフレーベル館『キンダーブック』、東京社『コドモノクニ』などで数多くのイラストを発表しました。

1958年4月23日、河目悌二は狭心症のため自宅で亡くなりました。享年68歳。しかし、彼の作品は、今もなお多くの人々の心に残り、愛され続けています。

没後

2009年と2016年には、刈谷市美術館で回顧展が開催され、改めてその業績が称えられました。河目悌二は、日本の童画史にその名を刻む、重要な画家の一人と言えるでしょう。

主な展覧会

2009年：「生誕120周年記念 河目悌二展」刈谷市美術館
2016年：「市制65周年記念　河目悌二展　みんな元気！懐かしの子どもたち」刈谷市美術館

参考文献

『日本人名大辞典』講談社、2001年。
刈谷市美術館『生誕120周年記念 河目悌二展』刈谷市美術館、2009年。

外部リンク

* 河目悌二 - 刈谷市美術館

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