治水ダム

治水ダムの概要

治水ダム（ちすいダム）とは主に洪水調節や農地防災を目的としたダムです。一般的には小規模なものが多いですが、最近では大規模な治水ダムも計画されており、効率的な河川管理のための重要な要素となっています。治水ダムは水道や水力発電などの利水機能を持たないため、その目的は治水に特化しています。

主に貯水を行うダムと、貯水を行わず流水を維持する「流水型ダム」が存在します。これらのダムは、河川の流れを制御し、大雨時の洪水を調節する役割を果たします。治水ダムは、計画段階での技術や設計も多様化してきており、重力式コンクリートダムが多く採用されていますが、ロックフィルダムやアースダムなど、さまざまな型式があります。

治水ダムの歴史的背景

治水ダムの建設は古くから行われており、18世紀にはヨーロッパを中心に洪水調節を目的としたダムが作られるようになりました。しかし、20世紀に入り、多目的ダムの考え方が普及し、治水専用のダム建設は少なくなっていきました。特に、ヨーロッパでは治水の政策が整備され、極端な洪水にも耐えられるダムが建設されています。日本でも同様の流れがあり、特に太平洋戦争後の「河川改訂改修計画」に関連して、利根川や淀川などで多目的ダムが設置されました。

農地防災事業

また、農業分野では灌漑用水の確保が求められ、農地を水害から守るための「農地防災事業」が重要視されました。これに伴い、農地防災ため池という形で治水ダムが建設されるようになり、岐阜県の小渕ダムなどがその例です。1950年代から1960年代においては、治水ダムとしての建設が盛んに行われました。

補助治水ダム制度の創設

1967年には「補助治水ダム制度」が導入され、都道府県が管理する治水ダムの建設が進められるようになりました。この制度によって、建設に必要な事業費を国から補助を受けることができ、全国各地で新たな治水ダムが次々と完成していきました。現在、全国には215の治水ダムが存在しています。

治水ダムの特性

治水ダムは洪水調節がその主な目的です。通常、ダム湖の有効貯水容量は、堆砂量を考慮した上で算出され、洪水調節のための容量が大部分を占めます。多目的ダムと異なり、水量操作の必要がなく、事前放流が少なくて済むため、管理の簡素化と工費削減を実現できます。特に、近年建設されるダムのほとんどはゲートを持たないゲートレスダムで、自然な水の流れを維持しつつ、洪水が迫った際は自動的に流れる仕組みをとっています。

流水型ダム

流水型ダムは、常に穴が開いており、水流が常に流れている状態です。これにより、洪水時のみ水を貯めることが可能で、通常時にはダムのように見えません。これに対する懸念もある一方で、小規模ながらも有用な手段として採用され続けています。実際、日本では1950年代から流用型ダムが数多く建設されており、その効果も確認されています。

現在の治水ダムの動向

近年は、都市化に伴い中小河川での洪水のリスクが高まり、治水対策の見直しが求められています。1970年代には治水ダムの多目的化が進み、1990年代以降は水需要の減少で多目的ダムの治水専用への転換が見られ、ますます治水ダムの役割が重要とされています。水害への備えと変わらない治水ダムの建設は、今後の地域の安全にも寄与することでしょう。

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