泉福寺洞窟

泉福寺洞窟遺跡：古代の生活を垣間見る歴史の宝庫

佐世保市瀬戸越町にある泉福寺洞窟遺跡は、相浦川の近く、標高89メートルの砂岩の崖に開口する4つの洞窟からなる旧石器時代から弥生時代までの遺跡です。南向きの洞窟の開口部と近くの湧き水は、古代の人々にとって住居として理想的な環境を提供していました。

発見から発掘調査へ

1969年、大野中学校の生徒によって偶然発見されたこの遺跡は、翌年から10年間にわたり、千葉大学名誉教授の麻生優氏を団長とする発掘調査が行われました。調査の結果、12層にも及ぶ地層から、後期旧石器時代のナイフ形石器から平安時代の瓦器まで、多様な遺物が発掘されました。

世界最古級の土器：豆粒文土器

特に注目すべきは、東端の第3洞窟の前庭部から出土した、約16,000年前と推定される世界最古級の土器、豆粒文土器です。粘土を約500℃で焼成し、長楕円形の粘土粒を口縁部に等間隔に貼り付けた独特の文様が特徴です。器形は胴部がやや膨らみ、丸底に近い平底をしています。

この豆粒文土器は、第10層の最下部から発見され、中位からは豆粒文と隆起線文を併用した土器、上部からは隆起線文土器、さらに上層からは爪形文土器、押引文土器などが出土しました。これにより、土器の変遷をたどることができ、縄文時代草創期の研究において重要な役割を果たすと期待されています。隆起線文土器との関連性については、近隣の福井洞窟での出土状況との比較から、異なる起源を持つとする見解もあります。

その他の出土品と遺跡の指定

豆粒文土器以外にも、数多くの石器や土器などの遺物が発掘され、これらは国の重要文化財に指定されています。現在は佐世保市博物館島瀬美術センターに保管されており、一部は復元されたものが展示されています。ただし、三川内焼美術館に展示されているものはレプリカである点に注意が必要です。

泉福寺洞窟遺跡は、1986年に国の史跡に指定され、その歴史的価値が認められています。発掘された遺物から、古代の人々の生活や文化、技術、そして信仰などを知る貴重な手がかりが得られ、日本の先史時代研究に大きく貢献しています。

アクセスと周辺情報

泉福寺洞窟遺跡へのアクセスは、松浦鉄道西九州線泉福寺駅から徒歩約10分です。周辺には相浦地域（相神浦）など、歴史的な観光スポットも多く存在します。古代の歴史にふれる旅の目的地として、ぜひ訪れてみてください。

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