法政騒動

法政騒動とは

法政騒動は、1933年（昭和8年）から1934年（昭和9年）にかけて法政大学で起こった一連の学校騒動です。この騒動は、単なる教員間の対立にとどまらず、大学の運営体制、財政状況、人事慣行など、様々な問題が複雑に絡み合い、大学全体を大きく揺るがす事態となりました。

騒動の発端

騒動の直接的な発端は、1933年11月に法文学部教授の森田草平が、当時の野上豊一郎学監兼予科長の解任を要求したことに始まります。森田を中心とする反野上派は、野上の排斥を求めるために以下の4つのスローガンを掲げました。

1. 学長問題: 当時の学長に不満を持つ勢力が、別の有力者を学長に推すべきだと主張しました。
2. 隣接地購入問題: 大学の隣接する旧陸軍用地の購入が進まないことへの不満が表明されました。
3. 財政問題: 前学長の松室致が残した巨額の負債問題が浮上し、その解決策が求められました。
4. 人事行政問題: 法政大学出身者の教員採用を増やすべきだという声が上がりました。

反野上派は、これらの問題が解決しないのは野上の責任であると主張しました。しかし、野上は森田も同様に処分しなければ辞職には応じないと反論しました。

事態の展開

事態を収拾するため、当時の秋山雅之介学長は12月末に職権を発動し、野上を学監と予科長の職から解任し、さらに教授職の休職を命じました。この措置に反発した野上支持派の予科教授・講師47名も1934年1月11日に解職される事態となりました。1月15日には、大学側が騒動の経緯をまとめたパンフレットを発表し、事態の沈静化を図りました。

しかし、騒動はそれで収束せず、秋山学長は体調を崩して5月に辞職。後任の水町袈裟六総長も就任後わずか1ヶ月ほどで死去したため、収拾は小山松吉次期総長に委ねられることになりました。小山総長は、解職された予科教員を順次復職させ、1941年には野上も復帰させました。一方、騒動の一方の責任者とされた森田草平は、1935年10月に解職されました。

騒動の影響

これらの措置によって、法政大学は表面上は平穏を取り戻しましたが、騒動中に解職された教員の復職組と、騒動後に新たに採用された教員の間には、感情的なしこりが長く残ったと言われています。また、それまで「自由と進歩」を誇りとしていた法政大学の学風は、野上と入れ替わる形で顧問に就任した荒木貞夫（陸軍大将）や、騒動の調停に尽力した校友の竹内賀久治とその一派によって大きく損なわれることになりました。

法政騒動は、単なる大学内の騒動にとどまらず、当時の社会情勢や大学のあり方にも大きな影響を与えた事件として、その後の大学史研究においても重要な位置を占めています。

参考文献

大村八郎『帝都大學評判記』三友堂書店、1934年
秋山雅之介傳記編纂会『秋山雅之介傳』秋山雅之介傳記編纂會、1941年
法政大学『法政大学八十年史』法政大学、1961年
法政大学百年史編纂委員会, 法政大学『法政大学百年史』法政大学、1980年
法政大学百年史編纂委員会『法政大学の100年 : 「1880-1980」小史』法政大学、1980年

関連項目

学校騒動

外部リンク

* 宮永孝「昭和八、九年の「法政騒動」」『社会志林』第59巻第4号、法政大学社会学部学会、2013年3月、200-179頁

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