波山次郎
波山 次郎（はやま じろう、本名：尹 次郎、ユン・チャラン）は、1941年4月5日に宮城県仙台市に生まれ、1979年7月5日に亡くなったプロ野球選手です。投手として活躍しました。
波山は、中学時代からその才能を高く評価されていました。1955年秋に東北高校主催の中学生向け野球大会「南光大会」に、仙台市立第二中学校のエースとして出場し、その素質を見出されます。そして1957年4月、東北高校野球部に正式に入部しました。
高校時代、波山は数々の印象的な試合を経験します。特に同年9月8日、東北高校の招きによって評定河原球場で行われた早稲田実業との試合は語り草となっています。5回表からリリーフのマウンドに上がった波山は、当時すでに注目されていた早稲田実業の王貞治から三球三振を奪うなど、8回まで全く走者を出さない見事な投球を披露しました。しかし、9回に再び王との対戦が訪れ、場外本塁打を浴びて敗戦投手となりました。早稲田実業との再戦は翌1958年6月27日に実現し、この試合では波山が9回を7奪三振、2失点に抑え、王貞治に投げ勝っています。
1958年の高校野球宮城県大会では、救援投手としてチームを支えました。特に8月3日の仙台商業との決勝戦では、初回無死二、三塁の危機に外野からマウンドに上がりこれを凌ぐと、外野に戻った後、3回二死一、二塁の局面でも再び登板。この危機も乗り越え、最後まで投げ抜き勝利投手となりました。夏の甲子園では、8月9日の対長崎南山戦で圧巻の17奪三振を記録し勝利投手となりましたが、チームは2回戦で敗退しました。
1959年、東北高校は春季東北大会で優勝。夏の宮城県予選では、波山は2試合でのノーヒットノーランを含む5試合連続完封という圧倒的な投球でチームを優勝に導き、2年連続で夏の甲子園への出場を決めました。甲子園では、一回戦の下館第一戦、二回戦の倉敷工業戦にいずれも救援登板し、10奪三振を奪って勝利に貢献しました。準々決勝の日大二高戦でも救援しましたが、準決勝の宇都宮工業戦では味方の打線が援護に恵まれず、延長10回裏、自身の二塁への悪送球の間に走者が生還を許し、サヨナラ負けを喫しました。
なお、この年選出された高校野球日本代表の米国遠征メンバーに、波山は在日朝鮮人であったためアメリカへの入国が難しいという理由で選出が見送られています。
1959年10月15日、波山は大洋ホエールズと契約を結びプロ入りしました。契約金は当時の金額で700万円でした。しかしプロの壁は厚く、翌1960年3月8日のオープン戦での先発登板では、本来の投球ができず、わずか20球でマウンドを降りました。プロ初出場は同年7月31日の中日ドラゴンズ戦でしたが、これは投球ではなく「2番・レフト」としての出場であり、主に代走や守備固めなど一時的な出場目的での起用でした。
プロ初登板は10月5日、広島カープ戦でした。先発した波山は相手先発の長谷川良平と投げ合い、6回を1失点に抑えてマウンドを降り、プロ初勝利を手にしました。打者としても活躍し、3回にはプロとして初めて立った打席で二塁打を放ち、5回にも右前安打を記録しています。この年、チームは日本シリーズを制覇し、波山もベンチ入りメンバーに名を連ね、チームの日本一達成を見届けました。
1961年は主にリリーフ投手として起用されましたが、4月25日の中日戦で救援登板で打ち込まれプロ入り後初めて敗戦投手となると、その後も救援投手としては結果を残せず、苦戦が続きました。5月5日の国鉄スワローズ戦でも同点の状況で登板するも勝ち越し点を許し、2度目の黒星を喫し、二軍行きを通告されました。
1962年は公式戦での登板がわずか2試合に留まり、1963年には一軍での登板機会はありませんでした。1964年、二軍の北海道遠征に同行し、久々に好投を見せます。8月11日の東映フライヤーズ戦では8回2失点、8月14日の読売ジャイアンツ戦では4奪三振1失点で完投勝利。さらに登板間隔を中一日で迎えた8月16日の東映戦では、被安打1本、5奪三振という内容で完封勝利を達成しました。この活躍が認められ一軍に再昇格しますが、8月25日の巨人戦に3番手として救援のマウンドに上がった際、船田和英に3点本塁打を浴び、次のイニングを三者凡退に抑えたところで交代となりました。これが大洋ホエールズの一員としての最後の登板となり、シーズン終了後に自由契約の通告を受けました。
プロ野球選手としてのキャリアを終えた波山は、1965年5月23日、家族の希望を受けて、両親、兄、妹、弟とともに帰国事業の船団の一つである第125次船で新潟港から北朝鮮へと渡航しました。同年5月25日には清津に到着しました。
その後の消息は長い間不明でしたが、後に清津市の鉄工所で「職業体育」として野球を続け、労働者体育大会などで活躍していたことや、1973年からは弟とともに平壌市の「平壌鉄道体育団」の野球チームに所属していたことが明らかになりました。さらに、1974年に北朝鮮各地で行われたキューバ代表との試合には、北朝鮮代表チームの一員として投手で出場。打者としても本塁打を放っていたことも判明しており、帰国後も野球への情熱を持ち続けていたことがうかがえます。
1977年には清津の鉄工所へ戻り、1979年7月5日、勤務中の事故により38歳で亡くなりました。職場での事故による死去であったため、国から「社会主義建設愛国者」として顕彰されました。
投手登録でしたが、プロでは外野手や一塁手、二塁手としても公式戦に出場した記録があります（1960年に外野10試合、1961年に一塁4試合・外野1試合、1962年に外野3試合、1964年に外野7試合・二塁2試合）。背番号はプロ入りから退団まで一貫して「46」でした。
高校時代の躍動
波山は、中学時代からその才能を高く評価されていました。1955年秋に東北高校主催の中学生向け野球大会「南光大会」に、仙台市立第二中学校のエースとして出場し、その素質を見出されます。そして1957年4月、東北高校野球部に正式に入部しました。
高校時代、波山は数々の印象的な試合を経験します。特に同年9月8日、東北高校の招きによって評定河原球場で行われた早稲田実業との試合は語り草となっています。5回表からリリーフのマウンドに上がった波山は、当時すでに注目されていた早稲田実業の王貞治から三球三振を奪うなど、8回まで全く走者を出さない見事な投球を披露しました。しかし、9回に再び王との対戦が訪れ、場外本塁打を浴びて敗戦投手となりました。早稲田実業との再戦は翌1958年6月27日に実現し、この試合では波山が9回を7奪三振、2失点に抑え、王貞治に投げ勝っています。
1958年の高校野球宮城県大会では、救援投手としてチームを支えました。特に8月3日の仙台商業との決勝戦では、初回無死二、三塁の危機に外野からマウンドに上がりこれを凌ぐと、外野に戻った後、3回二死一、二塁の局面でも再び登板。この危機も乗り越え、最後まで投げ抜き勝利投手となりました。夏の甲子園では、8月9日の対長崎南山戦で圧巻の17奪三振を記録し勝利投手となりましたが、チームは2回戦で敗退しました。
1959年、東北高校は春季東北大会で優勝。夏の宮城県予選では、波山は2試合でのノーヒットノーランを含む5試合連続完封という圧倒的な投球でチームを優勝に導き、2年連続で夏の甲子園への出場を決めました。甲子園では、一回戦の下館第一戦、二回戦の倉敷工業戦にいずれも救援登板し、10奪三振を奪って勝利に貢献しました。準々決勝の日大二高戦でも救援しましたが、準決勝の宇都宮工業戦では味方の打線が援護に恵まれず、延長10回裏、自身の二塁への悪送球の間に走者が生還を許し、サヨナラ負けを喫しました。
なお、この年選出された高校野球日本代表の米国遠征メンバーに、波山は在日朝鮮人であったためアメリカへの入国が難しいという理由で選出が見送られています。
プロ入り後の苦闘
1959年10月15日、波山は大洋ホエールズと契約を結びプロ入りしました。契約金は当時の金額で700万円でした。しかしプロの壁は厚く、翌1960年3月8日のオープン戦での先発登板では、本来の投球ができず、わずか20球でマウンドを降りました。プロ初出場は同年7月31日の中日ドラゴンズ戦でしたが、これは投球ではなく「2番・レフト」としての出場であり、主に代走や守備固めなど一時的な出場目的での起用でした。
プロ初登板は10月5日、広島カープ戦でした。先発した波山は相手先発の長谷川良平と投げ合い、6回を1失点に抑えてマウンドを降り、プロ初勝利を手にしました。打者としても活躍し、3回にはプロとして初めて立った打席で二塁打を放ち、5回にも右前安打を記録しています。この年、チームは日本シリーズを制覇し、波山もベンチ入りメンバーに名を連ね、チームの日本一達成を見届けました。
1961年は主にリリーフ投手として起用されましたが、4月25日の中日戦で救援登板で打ち込まれプロ入り後初めて敗戦投手となると、その後も救援投手としては結果を残せず、苦戦が続きました。5月5日の国鉄スワローズ戦でも同点の状況で登板するも勝ち越し点を許し、2度目の黒星を喫し、二軍行きを通告されました。
1962年は公式戦での登板がわずか2試合に留まり、1963年には一軍での登板機会はありませんでした。1964年、二軍の北海道遠征に同行し、久々に好投を見せます。8月11日の東映フライヤーズ戦では8回2失点、8月14日の読売ジャイアンツ戦では4奪三振1失点で完投勝利。さらに登板間隔を中一日で迎えた8月16日の東映戦では、被安打1本、5奪三振という内容で完封勝利を達成しました。この活躍が認められ一軍に再昇格しますが、8月25日の巨人戦に3番手として救援のマウンドに上がった際、船田和英に3点本塁打を浴び、次のイニングを三者凡退に抑えたところで交代となりました。これが大洋ホエールズの一員としての最後の登板となり、シーズン終了後に自由契約の通告を受けました。
北朝鮮帰国後の活動
プロ野球選手としてのキャリアを終えた波山は、1965年5月23日、家族の希望を受けて、両親、兄、妹、弟とともに帰国事業の船団の一つである第125次船で新潟港から北朝鮮へと渡航しました。同年5月25日には清津に到着しました。
その後の消息は長い間不明でしたが、後に清津市の鉄工所で「職業体育」として野球を続け、労働者体育大会などで活躍していたことや、1973年からは弟とともに平壌市の「平壌鉄道体育団」の野球チームに所属していたことが明らかになりました。さらに、1974年に北朝鮮各地で行われたキューバ代表との試合には、北朝鮮代表チームの一員として投手で出場。打者としても本塁打を放っていたことも判明しており、帰国後も野球への情熱を持ち続けていたことがうかがえます。
1977年には清津の鉄工所へ戻り、1979年7月5日、勤務中の事故により38歳で亡くなりました。職場での事故による死去であったため、国から「社会主義建設愛国者」として顕彰されました。
投手登録でしたが、プロでは外野手や一塁手、二塁手としても公式戦に出場した記録があります（1960年に外野10試合、1961年に一塁4試合・外野1試合、1962年に外野3試合、1964年に外野7試合・二塁2試合）。背番号はプロ入りから退団まで一貫して「46」でした。
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