波風 (駆逐艦)

駆逐艦「波風」

「波風」（なみかぜ）は、大日本帝国海軍の駆逐艦であり、峯風型駆逐艦の14番艦として竣工しました。この艦は、「波の上に吹き渡る風」という自然現象から名付けられました。その艦歴は、大正時代から太平洋戦争終結まで、多岐にわたる任務を遂行した激動の時代を反映しています。

建造と初期

舞鶴海軍工廠で建造された「波風」は、一等駆逐艦として横須賀鎮守府に所属しました。1922年12月には、同型艦の「野風」、「沼風」とともに、神風型駆逐艦「神風」（初代）と共に第一駆逐隊に編入され、主に千島列島や北海道方面での海上交通保護に当たりました。

日中戦争から太平洋戦争へ

日中戦争が勃発すると、「波風」は1938年以降、華北や華中の沿岸作戦に参加し、戦火の中を航海しました。太平洋戦争が始まると、北方海域での海上護衛や哨戒任務が主な役割となり、広大な海域を警戒しました。しかし、1944年9月、択捉島南方で米潜水艦「シール」の雷撃を受けて大破するという危機に直面します。「神風」による曳航で小樽へと移動し、応急修理を受けた後、舞鶴工廠での本格的な修理とともに、回天搭載艦への改造工事を受けました。

回天搭載艦への改造

「波風」は、回天搭載艦として再起を図るため、大規模な改装が施されました。主な変更点は以下の通りです。

主砲は1番砲を残して撤去。
魚雷発射管は全廃。
機関の改造により、出力25,000馬力、速力29.5ノットに。
対空兵装として、25mm連装機銃6基と同単装機銃（または13mm単装機銃）8挺を装備。
艦尾に回天2～4基を搭載するためのスロープを設置。

1945年2月1日までの工事を経て、「波風」は新たな役割を担うことになりました。しかし、同年6月からは、宇部沖でB-29が投下した機雷の監視任務に従事し、終戦を呉港で迎えることになります。

戦後

終戦後の1945年10月に除籍された「波風」は、同年12月に特別輸送艦の指定を受け、復員輸送に従事しました。その後、特別保管艦（賠償艦）に指定され、1947年10月に中華民国へと引き渡され、その艦歴は新たな章へと移ります。

中華民国海軍での「瀋陽」

中華民国海軍に編入された「波風」は、「瀋陽」（Shen Yang）と改名されました。その後、1960年に退役し、その生涯を終えました。日本海軍の一駆逐艦として生まれ、中華民国海軍の艦艇としてその役割を終えた「波風」の物語は、時代の変遷とともに歴史の中に刻まれています。

歴代艦長

「波風」の歴代艦長には、多くの軍人が名を連ねています。彼らは、この艦の歴史を支え、その航海を導いてきました。以下に主な艦長を記載します。

田尻敏郎 少佐
山中順一 少佐
倉田七郎 中佐
郷田喜一郎 少佐
佐藤慶蔵 少佐
山下深志 中佐
小林徹理 中佐
池田七郎 少佐
長谷部喜蔵 少佐
大森仙太郎 少佐
植田弘之介 少佐
古村啓蔵 少佐
渋谷紫郎 少佐
瀬戸山安秀 少佐
山田勇助 少佐
岡田要造 少佐
高島鉄郎 少佐
矢野寛二 少佐
平山敏夫 少佐
平田正明 大尉
中尾小太郎 少佐
* 石戸勇 少佐


「波風」は、その生涯を通じて、日本の海軍史において重要な役割を果たしました。その物語は、多くの人々に語り継がれるべき歴史の一部です。

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