洗礼者ヨハネの首を持つサロメ (ルイーニ)

ベルナルディーノ・ルイーニの『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』は、聖書の物語を題材にした絵画であり、複数のバージョンが存在します。最も有名なものはウフィツィ美術館に所蔵されている作品です。

歴史的背景

この作品は、元々レオナルド・ダ・ヴィンチの作品として認識されていましたが、1890年にルイーニの作品として再評価されました。制作時期はルイーニの晩年、1527年から1530年頃と推定されています。サロメの顔は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『ほつれ髪の女』からの影響が指摘されており、身体のひねりや頭部の傾け方にもレオナルドの画風が色濃く表れています。

描かれている物語

絵画の主題は、「マルコによる福音書」と「マタイによる福音書」に記述されているサロメと洗礼者ヨハネの物語です。ヘロデ・アンティパス王の前で踊りを披露したサロメは、その褒美として母親ヘロデヤの要求により、洗礼者ヨハネの首を求めます。ヨハネは斬首され、その首は皿に載せられてサロメに差し出されました。

作品の詳細

この絵画は、斬首された洗礼者ヨハネの首を処刑人が容器に入れている場面を描いています。容器は棚に置かれ、サロメ（または母親のヘロデヤ）がそれを支えています。左側には、ベールを被った女中が目撃者として描かれています。処刑者の顔は戯画的に描かれており、その醜悪さが際立っています。対照的に、洗礼者ヨハネの顔は繊細で生気がありません。サロメのドレスや精緻な髪型は、16世紀初頭の流行を反映しており、細部にまで注意が払われています。少女の顔には、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響が特に顕著に見られます。

他のバージョン

ルイーニ自身による『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』は、ウフィツィ美術館の他にも、ウィーン美術史美術館、ルーヴル美術館、ボストン美術館、プラド美術館、ベッラ島のボッロメーオ皇太子のコレクションに所蔵されています。これらのバージョンを比較することで、ルイーニの解釈の変遷や、各美術館のコレクションの特徴を知ることができます。

まとめ

『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』は、ルネサンス期の画家ベルナルディーノ・ルイーニの代表作の一つであり、聖書の物語を題材にしながらも、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けた優美な人物描写や、劇的な場面構成が魅力です。ウフィツィ美術館を訪れる際には、ぜひこの作品を鑑賞し、ルネサンス美術の奥深さを堪能してください。

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