津和野町々歌

津和野町々歌

「津和野町々歌」は、島根県鹿足郡津和野町が、大正時代に制定した由緒ある町歌です。作詞は佐伯常麿、校閲は文豪・森林太郎（森鷗外）、作曲は安達孝が手掛けました。

制定の背景

この町歌が制定されたのは、1889年（明治22年）から1955年（昭和30年）1月9日まで存在した初代津和野町の時代です。その後、津和野町は新設合併を経験し、現在の3代目津和野町に至ります。しかし、合併協議において町歌の扱いに関する明確な取り決めがなされなかったため、その地位は現在、公式には不明確な状態となっています。

制作秘話

町歌制定の裏には、森鷗外と津和野町の人々との交流がありました。1921年（大正10年）6月、当時の津和野町長であった望月幸雄は、東京の宮内省図書寮に鷗外を訪ね、町歌の作詞を依頼しました。しかし、鷗外は病状が悪化していたため、この依頼を固辞し、代わりに同郷の国文学者である佐伯常麿を推薦しました。

望月は鷗外の紹介を受け佐伯に面会しましたが、佐伯もまた、その重責から作詞を躊躇し、鷗外こそが町歌の作詞にふさわしいと譲りませんでした。その後、三者間で協議が重ねられ、最終的に佐伯の原案を鷗外が補作・校閲し、両者の名義で発表することで合意に至りました。

完成した歌詞には、東京音楽学校でオルガンを指導していた安達孝が作曲、島崎赤太郎が編曲を行い、1921年（大正10年）12月24日に楽譜が町役場に届けられました。そして、翌1922年（大正11年）元旦には、町主催の新年祝賀式典で発表演奏が行われ、町民に披露されました。

現在の状況

前述の通り、この町歌は初代津和野町によって制定されたものであり、その後の新設合併によって成立した2代目、3代目の津和野町は、それぞれ法的には別の団体として扱われます。合併協議会では町歌の扱いについて明確な決定はなされませんでしたが、2代目津和野町の時代には、『広報つわの』1996年（平成8年）3月号で「鷗外検閲『津和野町町歌』およそ半世紀ぶりに！」と題して、復活演奏の様子が紹介されました。このことから、町歌が長きにわたり、町民に愛され、大切にされてきたことが伺えます。

著作権について

「津和野町々歌」の歌詞・旋律は、著作権の保護期間を満了しており、パブリックドメインとなっています。そのため、自由に利用することができます。

参考文献

遠藤宏『瀧廉太郎の生涯と作品』（音楽之友社〈音楽文庫〉11、1950年）
岩谷建三『近代の津和野』（津和野歴史シリーズ刊行会、1978年）
森鷗外記念会『鷗外』第25号（1979年7月）, pp10-15
苦木虎雄「津和野町歌と鷗外先生」
クラウス・クラハト、克美・タテノ＝クラハト『鷗外の降誕祭（クリスマス） 森家をめぐる年代記』（NTT出版、2012年）

関連項目

島根県の市町村歌一覧

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