津城

津城の歴史と概要

概要

津城（つじょう）は、三重県津市の中心部、丸之内にあたる場所に築かれた日本の城です。別名は安濃津城と呼ばれ、三重県の指定史跡でもあります。城は、北側に安濃川、南側に岩田川を背に、これらの河川を天然の堀として巧妙に設計されています。

江戸時代初期に、名城信の築城の名手である藤堂高虎によって大幅に改修され、津藩の藩庁としての役割を果たしました。津城の内部構造は、中央に内堀で囲まれた本丸があり、その周囲には東丸と西丸が配されています。また、これらを巡るように二の丸が位置し、平地に広がる輪郭式の城郭として整備されていました。現在、城跡は「お城公園」「お城西公園」として整えられ、地域の人々から親しまれています。城内には高山神社もあり、その周辺には津市役所や津地方裁判所、津警察署などの公共施設も並んでいます。

沿革

津市は古称を安濃津（あのつ）といい、平安時代から伊勢国の政治と経済の中心として栄えていました。鎌倉時代には藤原南家の流れをくむ工藤氏を祖とする長野氏がこの地域を支配していました。

津城の建設は、戦国時代の永禄年間（1558年 - 1569年）にさかのぼります。この時、長野氏の一族である細野藤光が、安濃川と岩田川の三角州に小規模な安濃津城を築きました。しかし、永禄11年（1568年）には織田信長が伊勢進行を開始し、織田掃部頭である津田一安がこの城に入城しました。翌1569年には織田信包が後を継ぎ、城郭の拡充に取り組みました。信包は城を強化するために石垣を築き堀を巡らせ、本丸、二の丸、三の丸を整備しました。天正5年（1577年）には5重の天守と小天守の完成が見られます。

歴史的な文書『累世記事』によると、伊勢地方に詳しい滝川一益がこの地に城を築くよう進言し、その縄張りを信包に渡したとされています。また、信包は自身の家族であるお市の方やその妹たちを保護し、訪問を受け入れたとも伝えられていますが、近年の研究によると、実際には信長や信包の叔父である織田信次が彼女たちを保護し、守山城に滞在させていたことが明らかになっています。

その後、豊臣家の時代に入ると、文禄3年（1594年）に信包は秀吉の命により丹波国に移封され、代わりに豊臣家の家臣である富田一白が城主として入城しました。彼の後継である信高は、関ヶ原の戦いにおいて城を守備していましたが、劣勢に立たされ、多くの建物が焼失しました。しかしこの奮闘の結果、戦後に江戸幕府から石高の加増を受けることとなりました。

その後、慶長13年（1608年）に信高が移封され、藤堂高虎が伊勢・伊賀に22万石で入城しました。高虎は津城を再度改修し、城を現在の輪郭式城郭へと変貌させ、城下町の整備にも力を注ぎました。この時期以降、明治維新まで藤堂氏は津城に居を構えていました。

特に重要なのは、大坂の陣での功績によって藤堂氏は石高を増やし、最終的には32万3,000石の大大名に至ったことです。

当時、城内にあった天守は関ヶ原の戦いで焼失し、その後再建されることはありませんでしたが、近年の研究で寛永年間に描かれた絵図に三重天守と二重小天守が描かれていることが明らかになっており、これが旧・富田氏の再建によるものと考えられています。

津は江戸時代を通じて伊勢神宮参拝の拠点として栄え、「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ」という言葉が残されるまでに至りました。明治4年（1871年）には廃藩置県により廃城となり、以後、城の構造物は失われていきました。その後、「お城公園」として整備され、昭和33年（1958年）にはコンクリート製の模擬隅櫓が復元されましたが、これは史実に基づかない観光用のものであることに注意が必要です。また、今も本丸跡の入口には藩校の正門が移築されて残されており、歴史の一端を感じることができます。

平成29年（2017年）には続日本100名城に選定され、現在もその歴史的価値が評価されています。

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