津市立三重短期大学

三重県津市一身田中野にキャンパスを構える津市立三重短期大学は、1952年に設立された公立の短期大学です。地域に根差した学びの場として、地元では「三重短」や「TCC」の略称で親しまれています。三重県内で唯一の公立短期大学であり、設置主体である津市と連携しながら教育活動を行っています。

歴史と設立の背景

本学の起源は、1951年から1952年にかけて国立大学の三重大学内に設けられた夜間大学の公開講座にさかのぼります。この講座では政治学、社会学、法学といった社会科学系の科目が開講され、多くの勤労学生が学びました。彼らの「夜間でも専門的な社会科学を学びたい」という強い要望が、津市に対する短期大学設立の請願へと繋がったのです。こうして誕生したのが、現在の法経科第二部（夜間部）であり、夜間講座の受講生が第一期生となりました。同時期には、戦後の混乱期において法律や経済などの知識を求める勤労者や若者の学習意欲を背景に、各地で社会科学系の公立夜間短期大学が設立されています。

設立当初は法経科第二部に加え、家政科も設置されました。家政科の設置には、当時の津市長夫人の働きかけが大きかったとされています。これは、伝統的な女子教育や良妻賢母的な素養を育むニーズと、男女平等社会における女子の高等教育機関への進学を望む声の両方に応えるものでした。

教育理念と特徴

津市立三重短期大学は、以下の教育理念を掲げています。

憲法および教育基本法の精神に基づき、民主的で文化的な社会の形成者として、心理を探究し、人権を尊重する人間を育む。
幅広い教養と専門知識を備え、論理的かつ自主的な判断能力を持つ職業人を育成する。
* 現代社会を総合的・科学的に理解し、主体的に活動できる市民としての実践的な教養を培う。

本学の大きな特徴の一つは、公立短期大学としては数少ない法律系の学科（法経科）と夜間部（法経科第二部）を設置している点です。津市民にとっては比較的安価な学費で高等教育を受ける機会が提供されており、地域における教育補助金制度としての側面も持ち合わせています。

法経科では、市民社会を重視する観点からイギリス憲法との比較教育を取り入れるなど、実践的な視点を重視しています。また、戦後日本の社会政策研究機関としての歴史的経緯を持ち、経済学教育においても当初のマルクス経済学から、ケインズ経済学や公共政策を重視する民主社会主義理論へと教育内容が変遷してきました。ドイツ語やドイツ社会思想史、法哲学、イギリス・日本文化比較といった多様な視点からの社会政策教育も行われています。近年では、職業経験教育や中国語教育にも力を入れています。

法経科第二部は、勤労者や主婦、高齢者など多様な年齢層の学びのニーズに応えるべく、生涯学習やリカレント教育の機会を提供しています。

組織と取得可能な資格

現在、本学には法経科（第一部、第二部）、生活科学科、食物栄養学科が設置されています。かつては専攻科（被服専攻）も存在しましたが、現在は学生募集を行っていません。附属機関として図書館や、津市及び周辺地域の課題を研究する地域問題総合調査研究室があります。

卒業により取得可能な資格には、食物栄養学科での栄養士資格があります。また、教職課程として中学校教諭二種免許状（社会、家庭）の取得が可能であり、かつては栄養教諭二種免許状の課程も設置されていました。設立当初は高等学校教諭免許状の取得も可能でしたが、法改正により現在は短期大学では取得できません。

キャンパスと学生生活

キャンパスは津市の北部、一身田地区に位置しており、最寄りの駅は近畿日本鉄道の江戸橋駅です。駅周辺には三重大学もあり、学生街としての雰囲気も一部で見られます。キャンパス周辺は田園と住宅地が広がる比較的落ち着いた環境です。なお、本学のキャンパスは津市の指定避難所にもなっています。

学内には学生食堂があり、学生や教職員による生活協同組合によって運営されています。学生寮はありませんが、学生部を通じてアパートなどの住居情報提供が行われています。クラブ活動やサークル活動も盛んで、体育系、文化系ともに多様な団体があります。特に「小笠原流華道」といったユニークな文化系クラブも活動しています。また、三重大学や三重県立看護大学といった近隣の大学との交流も行われています。学園祭は例年11月中旬に開催され、地域住民も訪れるイベントとなっています。スポーツ面では、中部地区公立短期大学交歓競技会で総合優勝を果たした実績もあります。

卒業後の進路

本学の卒業生は、多様な分野で活躍しています。多くの学生が民間企業への就職を選択するほか、公務員として地域社会に貢献する道を選ぶ卒業生も少なくありません。食物栄養学科の卒業生は栄養士として専門性を活かしています。

また、4年制大学への編入学も盛んに行われています。これまでの実績を見ると、三重大学をはじめとする多くの国公立大学や、関西圏・東海圏を中心とした私立大学へ多数の卒業生が進学しています。これは、本学が提供する基礎学力と専門知識が、その後の高度な学びにつながっていることを示しています。

地域との連携と将来展望

津市立三重短期大学は、地域社会との連携を重視しており、「高等教育コンソーシアムみえ」への参加や、地域問題を研究する施設の設置、公開講座の実施などを通じて、生涯学習機会の提供や地域課題の解決に貢献しています。

将来的には4年制大学への移行や三重県立大学への設置者変更といった構想も存在しますが、これらは現時点では具体的な計画には至っていません。しかし、地域唯一の公立短期大学として、時代の変化や地域のニーズに応えながら、教育・研究活動を続けていくことが期待されています。

もう一度検索