津波地震

津波地震とは

津波地震とは、地震動の規模から予測されるよりも、著しく大きな津波が発生する地震のことです。1972年に地震学者の金森博雄によって定義されました。通常の地震では、地震の規模（マグニチュード）が大きいほど、地震動も津波も大きくなる傾向がありますが、津波地震ではこの関係が当てはまりません。地震の揺れは比較的小さいにもかかわらず、巨大な津波が発生するため、注意が必要です。

津波地震のメカニズム

津波は、海底で発生した地震によって海底の地殻が変動し、海水が上下に動くことで発生します。通常の地震では、断層運動の規模が大きいほど、地震動も津波も大きくなります。しかし、津波地震では、地震の揺れが小さいにもかかわらず、大きな津波が発生します。これは、以下の要因が考えられます。

スロースリップ: 津波地震では、断層のずれが通常の地震よりもゆっくりと発生します（スロースリップ）。これにより、短周期の地震動があまり発生せず、揺れが小さく感じられます。しかし、ゆっくりとした断層のずれは、海水を大きく動かすため、巨大な津波を発生させます。
海溝軸付近のずれ: 海溝軸付近で大きなずれが発生すると、津波が大きくなる傾向があります。これは、海溝軸付近の地形が津波の発生に影響を与えるためと考えられます。
破壊伝播速度: 津波地震では、断層の破壊が伝播する速度が遅いことが多いです。通常の地震では秒速2.5〜3km程度ですが、津波地震では秒速1km程度の場合が多いです。この遅い破壊伝播速度により、津波の波源域が短時間で広がり、大きな津波を発生させます。

津波地震の危険性

津波地震は、地震の揺れが小さいため、地震発生直後の避難が遅れやすく、被害が拡大する危険性があります。1896年の明治三陸地震では、津波地震によって2万人以上が亡くなりました。

津波地震の例

過去の津波地震の例として、以下のものが挙げられます。

1605年 慶長地震: 地震の揺れはほとんど記録されていませんが、房総半島から九州にかけての広範囲で10m以上の津波が襲来し、数千人から1万人が溺死しました。
1677年 延宝房総沖地震: 推定されるマグニチュードはM6〜6.6ですが、津波マグニチュードは8.0と推定されています。
1771年 八重山地震: 推定されるマグニチュードはM7.4ですが、津波マグニチュードは8.5と推定されています。
1984年 鳥島近海地震：M5.7の地震でしたが、Mt7.3と津波マグニチュードが特異的に大きく、八丈島で1.3〜1.5mの津波を観測しました。
1946年 アリューシャン地震: 表面波マグニチュードは7.4程度でしたが、モーメントマグニチュードは8.1、津波マグニチュードは9.3と推定されています。ウニマク島では35mもの津波が襲来し、ハワイでも犠牲者を出しました。

類似の地震

津波地震と似た現象として、アウターライズ地震があります。アウターライズ地震は、海洋プレートが海溝に沈み込む際に発生する地震で、陸地での揺れは小さいものの、大きな津波を引き起こすことがあります。2011年の東北地方太平洋沖地震では、本震の後にアウターライズ地震が発生し、津波を増大させました。

まとめ

津波地震は、地震の揺れが小さいにもかかわらず、巨大な津波を引き起こす危険な地震です。過去の事例からも、その脅威は明らかです。地震が発生した際には、揺れの大きさに惑わされず、津波警報に注意し、迅速な避難を心がけることが重要です。

関連情報

防災
ハザードマップ
スロースリップ（ゆっくり地震）
マグニチュード
* 巨大津波

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