津軽の海

津軽の海（つがるのうみ）

「津軽の海」は、1971年4月25日に世に送り出された、ジャッキー吉川とブルー・コメッツによるシングル楽曲です。この曲の言葉は橋本淳氏が、そして旋律はメンバーである三原綱木氏が手がけました。

楽曲の特色

この楽曲は、橋本淳氏と三原綱木氏のコンビによるもので、「雨の赤坂」以来、実に8作品ぶり、2度目のタッグとなりました。タイトルの「津軽の海」が示す通り、歌詞からは演歌特有の叙情的な世界観が漂います。しかし、サウンドはそれとは対照的なアプローチが取られており、アコースティックギターとブラス楽器の響きが中心となった、温かくもどこか物悲しいフォークソング風の仕上がりとなっています。この音楽性は、後の日本の音楽シーンで流行する、心に染み入るような情感を歌う叙情派フォークにも通じる趣があります。

リリース当時の状況

本楽曲がリリースされた1971年という年は、日本の音楽シーンにおいて、グループ・サウンズ（GS）が全盛期を終え、新たな時代へと移行しつつある時期でした。特に、この曲が発売される約3ヶ月前には、GSブームを牽引してきたザ・タイガースやザ・スパイダースといった人気グループが既に解散を発表しており、多くのファンが時代の変化を感じていました。ジャッキー吉川とブルー・コメッツもまた、GSの代表格としての存在でしたが、この時期の音楽性の変化やシーン全体の移り変わりの中で、新たな方向性を模索していたと言えるでしょう。

チャート成績とその後の影響

前作「雨の賛美歌」がオリコンシングルチャートで最高65位を記録していたのに対し、残念ながら「津軽の海」は同チャートの100位圏内に入ることはありませんでした。この結果は、時代の流れと共にGSへの関心が薄れつつあった状況を反映しているとも考えられます。この作品以降、ジャッキー吉川とブルー・コメッツのシングルが、GSグループとしての活動期においてオリコンチャートで100位以内に入ることは見られなくなりました。これは、グループの商業的な面において、一つの大きな節目となったことを示唆しています。

B面曲とレコードジャケット

シングルのB面には「鏡の中で見た恋は」が収録されています。こちらも作詞は橋本淳氏ですが、作曲は小田啓義氏が担当しています。この楽曲は、A面の「津軽の海」とは異なり、やや演歌に近い歌謡曲のテイストを持った作品となっています。

また、レコードジャケットも当時の雰囲気を伝えています。港を背景に、メンバー5人が「BLUE COMETS」と記されたヨットに乗ってポーズを決めている構図は、楽曲のタイトルにある「海」を視覚的に表現しており、グループのイメージと合わせたデザインと言えるでしょう。

「津軽の海」は、グループ・サウンズから歌謡曲、そしてフォークへと音楽性が多様化していく時代の波の中で、ブルー・コメッツが試みた変化の一端を示す作品であり、グループのキャリアにおける重要な位置を占める一曲です。

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