津軽政兕

津軽政兕の生涯と業績

津軽政兕（つがる まさたけ）は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した旗本です。彼は陸奥国弘前藩の分家で、黒石領の3代当主として知られています。政兕は、その官位として正六位下・釆女正を持ち、また日本最古の釣り指南書『何羨録』の著者として名を馳せました。

若年期

政兕は寛文7年（1667年）に、2代当主である津軽信敏の嫡男として生まれました。延宝6年（1678年）5月10日、彼は4代将軍の徳川家綱に出会う機会を得ます。天和3年（1683年）12月14日には、父の死により家督を受け継ぎ、小普請に所属しました。先代までは交代寄合としての地位でしたが、彼は本家の弘前藩4代藩主である津軽信政から偏諱を受け、「政兕」と名乗ります。

結婚と家族

政兕は貞享3年（1686年）9月に上杉綱憲の養女である阿久理との婚姻を果たしましたが、残念ながら彼女は翌年に亡くなりました。また、子女には綾姫があり、津軽寿世に嫁いでいます。寿世は津軽信政の五男で、婿養子の立場でした。政兕の家族は、困難に直面しつつも、次世代にその名を受け継いでいきました。

政治的活動と事件

政兕の人生には、さまざまな出来事がありました。元禄15年（1702年）12月14日、元赤穂藩士により義父の吉良義央が殺害されました。この「赤穂事件」の翌朝、政兕とその忠実な家臣たちが吉良邸を最初に訪れたとされています。これにより、彼は忠義の象徴としても知られるようになりました。

釣りと文化

享保8年（1723年）、政兕は『何羨録』を著しました。この書は、日本における釣り文化の礎を築き、武士たちの間で釣りが楽しみであった時代を映し出しています。徳川綱吉の生類憐れみの令により釣りが一時的に制限される場面もありましたが、政兕はこの趣味を通じて武士の心情を表現しました。冒頭には「釣りは江戸の娯楽」「釣り船に乗る際、社会的地位は重要ではない」と記され、多くの人々に受け入れられました。

晩年と死

享保19年（1734年）6月21日、政兕は隠居し、津軽信政の五男である養子・寿世に家督を譲りました。隠居後、彼は泰雅と号し、余生を全うしました。寛保3年（1743年）に亡くなりましたが、生前には多くの子や孫を先に亡くす運命にありました。また、宝暦2年（1753年）には、黒石市の八幡宮境内に馬術調整のための馬場を設立したとされる伝承も残っています。

まとめ

津軽政兕は、釣り指南書『何羨録』の著者として武士の趣味を広めた重要な人物です。彼の人生は、様々な出来事や人々との関係によって形作られ、江戸時代の文化に大きな影響を与えました。

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