浄衣

浄衣（じょうえ）とは、日本において、神事、祭祀、法会など、宗教的な儀式の際に着用される特別な衣服のことです。これらの儀式に臨む者が心身を清め、神聖な場にふさわしい姿となるために身につけられます。その根底には「清浄な衣服」という意味があり、単に宗教者だけでなく、特定の場における清らかな服装全般を指すこともあります。

「清浄な衣服」という広い概念から、浄衣という言葉は様々な文脈で用いられます。例えば、四国八十八箇所巡礼において参加者が正装とする白装束、具体的には白衣（はくえ）や笈摺（おいずる）なども、この「清浄な衣服」という範疇で浄衣の一種として捉えられることがあります。このように、浄衣は特定の形式にとどまらず、広義には儀式や修行に際して身を清めるための衣服全般を指す場合があります。

神道における神職、すなわち神主などが祭祀で着用する浄衣は、主に白布や生絹といった清らかな素材で作られています。その構成は特徴的です。頭には立烏帽子（たてえぼし）をかぶり、上半身には狩衣（かりぎぬ）に似た形の装束を着用します。この狩衣形の袖には「袖括り（そでくくり）」と呼ばれる紐が通され、袖をたくし上げられるようになっています。下着としては単衣（ひとえ）を重ね、下半身には括り緒の袴（くくりおのはかま）、特に指貫袴（さしぬきばかま）と呼ばれる、裾を紐で括ることでバルーンのように膨らむ特徴的な形状の袴を身につけます。これらの装束をまとった上で、大麻（おおぬさ）や笏（しゃく）などを手にして儀式に臨みます。

仏教の僧侶においては、日常的に着用される「僧衣（そうえ）」の中でも、特に儀式や法会で用いられる袈裟（けさ）が浄衣にあたると考えられています。袈裟はもともと、釈迦の時代のインドにおいて、捨てられた布を寄せ集めて作った粗末な衣を意味しました。これは、私欲を捨て、質素倹約を旨とする仏道修行者の姿勢を示すものです。また、袈裟には「施された衣服」という意味合いも含まれます。仏教の戒律（律）では、修行者が自ら畑を耕して衣料の原料を得たり、それを製作したりすることを禁じています。これは生産活動に時間を取られることを防ぎ、修行に専念させるため、あるいは所有欲を離れるためと考えられています。そのため、信者などからの布施として与えられた衣服を着用することが一般的であり、このような「施された、清らかな衣服」という側面も浄衣と見なされる理由の一つとされています。

浄衣、特に僧侶の僧衣に関しては、現代社会の交通事情との関連で議論が生じることもあります。例えば、福井県道路交通法施行細則には「運転操作に支障を及ぼすおそれのある衣服を着用して車両を運転しないこと」という規定があります。この規定に基づき、2018年9月には、僧衣を着て自動車を運転していた僧侶が検挙される事例が発生しました。これは、僧衣の形状が運転操作の妨げになる可能性があると判断されたためです。このような事例は、伝統的な装束である浄衣が、現代の法規制や社会生活の中でどのように位置づけられ、あるいは制約を受ける可能性があるかを示す一例と言えるでしょう。

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