狩衣

狩衣（かりぎぬ）

概要

狩衣は平安時代以降の公家の日常着であり、もともとは狩りの際に着用されたことからその名が付きました。活動的なデザインから普段着として定着し、時代が進むにつれて公服の一つとしての地位を確立しました。狩衣は直垂に次いで4位の武家の礼服とされることもありましたが、狩衣姿での御所への出入りは禁止されていました。明治時代に入ると、神職の常装として用いられるようになりました。

構成

狩衣は基本的に、白小袖の上に単または袷仕立ての衣を重ね、共布の布帯「当帯」で締めます。立烏帽子を被るのが一般的で、袴には指貫や差袴が用いられています。衣装の形状は袍や直衣と似ていますが、襟は「襟紙」という物を使い、袖は広く作られています。袖口には「袖括り」という紐が通されており、引っ張ることで巾着のように袖口を絞ることができます。この紐のデザインは年齢に応じて異なるため、時代や身分を反映しています。

色目・模様

狩衣は普段着であるため、色や模様は自由ですが、禁色は避けるのが一般的です。特に神事に用いられる白色の無紋狩衣は「浄衣（じょうえ）」と呼ばれ、特別な意味を持ちます。狩衣は色目に関しても工夫が凝られ、裏地の色との組み合わせから生じる独特の美しさが求められました。

歴史的背景

狩衣は、もともと都の中産階級が日常的に着ていた布衣に由来します。初めは麻布製でシンプルなものでしたが、貴族たちが狩りや日常の装いとして取り入れることで、次第に高級な絹織物に変化していきました。平安初期には貴族の日常着として広まり、その後国風文化の影響を受けて色目やデザインが発展しました。平安時代中期からは狩衣を着て院御所に出入りすることが一般化し、重要な礼服と認識されるようになりました。

武家社会と狩衣

近世の武家社会において、狩衣は礼服としての役割を持ちました。特に四位の武士にとっては正月の礼装とされ、当時の階級に応じた狩衣が使われていました。武士たちの狩衣は基本的に裏地がつけられず、特定の地位にある者のみ裏付きの狩衣が許されることになっていました。

明治時代以降

明治に入ると狩衣は朝廷出仕時の礼装として用いられましたが、洋装が主流となる中で狩衣の役目は減少していきました。現在、狩衣は主に神職の装束として着用され、神社において重要な役割を果たしています。神社本庁の制度により、神職の地位によって着用する狩衣の仕様が異なり、今日も伝統が引き継がれています。

関連項目

• - 平安装束
• - 神職
• - 公家
• - 水干
• - 白張
• - 褐衣
• - 布衣

狩衣は歴史的な背景を持ちながら、現代でも大切にされています。神社などで見かける機会が多いため、その意味と価値を理解することが重要です。

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