浅草米兵暴行事件

浅草米兵暴行事件

浅草米兵暴行事件は、1951年3月21日に東京都台東区で発生した、在日朝鮮人によるアメリカ軍兵士を標的とした暴行殺人事件です。連合国軍の占領下という社会情勢の中、在日朝鮮人とアメリカ軍兵士の間に起きたこの事件は、当時の社会に大きな衝撃を与えました。

事件の背景

事件の背景には、複雑な社会情勢がありました。事件発生に先立つ3月2日、密入国者を中心とした408名の朝鮮人が大韓民国へ強制送還されました。この強制送還に対し、北朝鮮系の在日朝鮮人の間には、アメリカやイギリスを中心とする連合国軍への強い不満が高まっていました。

事件現場となった「朝鮮マーケット」は、当時在日本朝鮮人連盟（朝連）系の在日朝鮮人が実質的に支配していました。マーケット内には「強制送還反対」や「民主民族戦線」といったスローガンを掲げたビラやポスターが多数貼られ、北朝鮮系の朝鮮人が多くを占めていました。また、この地域では1950年3月にも「台東会館事件」が発生しており、警察による一斉捜索が行われるなど、治安上の問題を抱えていました。

事件の概要

1951年3月21日午前3時30分頃、浅草国際劇場（現在の浅草ビューホテル）の向かいにあった闇市、通称「朝鮮マーケット」内の旅館に、6名のアメリカ軍兵士が宿泊していました。旅館のオーナーらとアメリカ軍兵士が口論になった際、兵士の一人がハサミで切りつけられ負傷しました。負傷した兵士を他の兵士たちが車に乗せて脱出しようとしたところ、約100名ほどの朝鮮人に投石されました。さらに、約200メートル進んだところで、彼らは包囲され、コンクリート片などを投げつけられ、車は破壊されました。この時、アメリカ軍兵士1名が即死しました。

事件発生後、浅草警察署は警視庁予備隊（現在の機動隊）に出動を要請しました。予備隊は直ちに現場に駆けつけ、暴徒を解散させ、50名の朝鮮人を検挙しました。事件の結果、アメリカ軍兵士1名が死亡、1名が重傷、2名が軽傷を負いました。被害者がアメリカ軍兵士であったため、連合国人に対する刑事事件特別措置令に基づき、アメリカ軍が直接捜査を行い、在日朝鮮人17名を検挙しました。

事件の影響

この事件は、当時の国会でも「帝都の治安上ゆゆしき問題」として取り上げられ、朝鮮人の送還問題に関する議論が活発化しました。事件は、在日朝鮮人問題という社会的な課題を浮き彫りにし、その後の政策にも大きな影響を与えました。

参考文献

『毎日新聞』1951年3月22日朝刊・夕刊
『朝日新聞』1951年3月22日朝刊

関連項目

台東会館事件
在日朝鮮人の帰還事業
* 連合国軍占領下の日本

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