浅見安之丞

浅見安之丞：幕末の徳山藩士、その生涯と悲劇

浅見安之丞（あさみ やすのじょう）は、天保4年（1833年）に徳山藩士・浅見栄三郎の長男として生まれました。彼は幕末の激動期に、徳山藩士として藩のために尽力し、その忠義心と才能を発揮しましたが、最終的には悲劇的な死を遂げることになります。弟は同じく徳山七士の一人である児玉次郎彦です。

若き日の才能開花

幼い頃から読書や文芸に親しみ、特に槍術においては優れた才能を発揮しました。安政元年（1854年）には、その才能が認められ、藩校である興譲館の句読師に抜擢されます。同時に、大島流槍術の指南役も兼任し、文武両道に秀でた人物として藩内で頭角を現しました。

藩主への随行と国事への関与

万延元年（1860年）には小姓役として藩主に仕え、文久元年（1861年）には徳山藩主・毛利元蕃に従って江戸へ赴き、翌文久2年（1862年）には京へと上りました。京では、国事に関わる様々な出来事を目の当たりにし、尊王攘夷運動の高まりを肌で感じることになります。

八月十八日の政変と帰藩

文久3年（1863年）3月には、信田作太夫と共に御親兵に選ばれ、堺町御門の警衛という重要な任務に就きました。また、石清水八幡宮行幸の際には、攘夷派公家として知られる三条西季知の警護を担当するなど、多忙な日々を送りました。しかし、同年8月18日に八月十八日の政変が勃発すると、事態を重く見て急ぎ帰国し、藩に政変の内容を報告しました。帰藩後は、世子・毛利元功の学業指導を命じられ、教育者としてもその才能を発揮しました。

悲劇的な最期

元治元年（1864年）7月、藩校・興譲館の訓導役に転じましたが、その直後の禁門の変を契機に、徳山藩内では対幕恭順派が勢力を拡大。同年8月11日、安之丞は本城清、信田作太夫と共に捕らえられ、浜崎の獄に繋がれてしまいます。元治2年（1865年）1月11日、藩吏は安之丞らを毒殺しようとしましたが失敗。その後、1月14日に「死一等を減じ流罪に処す」という名目で、本城清、信田作太夫と共に新宮の浜に連れ出され、非業の死を遂げました。享年33歳という若さでした。

藩吏は、3人の遺体を砂中に埋めて死を隠蔽し、獄中での病死として藩主や萩藩に報告しました。しかし、遺族の願いが叶い、安之丞の遺体は一ノ井手の興元寺に葬られました。浅見家の家督は、弟の述造が継ぐこととなりました。

名誉回復と顕彰

明治21年（1888年）、徳山毛利家当主・毛利元功の尽力により、徳山七士全員が明治天皇の命によって靖国神社に合祀されるという名誉を受けました。さらに、明治31年（1898年）には、徳山七士全員に従四位が贈られ、その功績が改めて認められました。周南市の児玉神社には、七士の顕彰碑と贈従四位の碑が建てられ、彼らの遺徳を偲ぶことができます。

浅見安之丞は、激動の幕末期に藩のために尽力し、その才能と忠義心を示しましたが、時代の波に翻弄され、若くして命を落としました。しかし、彼の名は徳山七士の一人として、その功績とともに後世に語り継がれています。

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