浅間神社 (練馬区小竹町)

浅間神社（江古田浅間神社、茅原浅間神社）

東京都練馬区小竹町に位置する浅間神社は、地元では江古田浅間神社、または茅原浅間神社とも呼ばれています。この神社は、木花佐久夜姫命を主祭神とする富士信仰の神社であり、その起源は社伝によれば承平元年（931年）に遡るとされています。しかし、歴史学的な正確な創立年代は不詳です。

由緒と伝説

『新編武蔵風土記稿』には「富士浅間社」として記載されており、かつては真言宗豊山派の能満寺が別当寺でした。境内には、「果てもなきこの武蔵野の茅原に富士ばかりこそ山は見えけれ」という歌碑があり、この和歌にちなんで茅原浅間神社とも呼ばれるようになりました。

興味深い伝説として、かつて小竹町と江古田町の人々が神社の所有権を巡って争った際、夏に雪が降るという天変地異が起こり、その異変に驚いた両者が争いをやめ、共同で氏神として祀るようになったという話が残っています。また、別当寺であった能満寺の山号は「夏雪山」であり、ここにも夏に雪が降るという伝説が関連づけられています。

江古田の富士塚

浅間神社の拝殿後方には、国の重要有形民俗文化財に指定されている「江古田の富士塚」（通称：江古田富士）が保存されています。この富士塚は、富士山の溶岩で覆われた高さ8メートル、直径約30メートルの塚で、天保10年（1839年）に小竹丸祓講によって築かれたとされています。しかし、境内には文化4年（1807年）の石灯籠も残っており、この富士塚の築造は文化年間である可能性も指摘されています。都内にある富士塚の中でも、その規模は大きい方とされています。

富士塚では、かつて「山開き」や「登山」などの神事が盛んに行われ、その様子は記録映画にも残されています。1983年を最後に講中による富士塚参詣はなくなりましたが、現在でも7月1日の山開きには一般の登拝が可能です。また、正月三が日や神社の例祭（9月の第2土曜日と日曜日）にも登ることができます。2000年には「江古田の富士講関係資料」が練馬区登録有形民俗文化財に登録され、この地域の富士信仰の歴史を今に伝えています。

境内社

境内には、稲荷神社が祀られており、宇迦之御魂命が祭神として祀られています。

アクセス

浅間神社へは、西武池袋線の江古田駅から徒歩約1分という便利な場所にあります。拝観は無料で、誰でも気軽に訪れることができます。

まとめ

浅間神社は、富士信仰の歴史と、地域の伝説を今に伝える貴重な神社です。特に、国の重要有形民俗文化財に指定されている「江古田の富士塚」は、都内でも有数の規模を誇り、訪れる人々に深い印象を与えます。江古田駅からも近く、気軽に歴史と文化に触れることができる場所として、多くの人に親しまれています。

参考資料
江古田の富士塚 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
練馬区公式ホームページ「文化財詳細」
練馬区教育委員会生涯学習部『練馬の神社　三訂版』2006年
練馬区史編さん協議会『練馬区史　歴史編』1982年
江幡潤『練馬区史跡散歩』学生社、1993年
練馬古文書研究会編『練馬ふるさと事典』東京堂出版、2011年
石神井図書館郷土資料室編『練馬の伝説　改訂版』練馬区教育委員会、2006年
「上板橋村 富士浅間社」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ12豊島郡ノ4、内務省地理局、1884年6月
* 「上板橋村 能満寺」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ12豊島郡ノ4、内務省地理局、1884年6月

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