浅香丸 (特設巡洋艦)

浅香丸（あさかまる）

「浅香丸」は、1937年2月に三菱長崎造船所で建造され、日本郵船の貨物船として登録された。その役割は多岐にわたり、開戦前は特設運送艦として活動を開始し、戦争が勃発すると特設巡洋艦および特設運送船へと転用された。

建造と経歴

「浅香丸」は1937年に起工し、同年の11月30日に竣工した。建造に際しては「赤城丸」と同様に、第三次船舶改善助成施設が活用されたが、解体予定だった「丹後丸」の解体は途中で取り消されている。竣工後の運航は、パナマ運河経由でヨーロッパとの貿易に従事しており、1940年には日本海軍に徴用されることとなる。特設運送艦として再入籍後、その活動は特に重要な役割を果たしていく。

戦時活動

開戦前、「浅香丸」はパナマ運河を通過し、ドイツとの兵器交換のためにヨーロッパへ向かった。アメリカ軍との接触もあり、スパイ防止のために武装兵を同乗させられる騒動が起こるが、最終的には数名が乗船する形で妥協が成立。リスボン経由でビルバオに到達し、日本側からは魚雷をドイツに提供し、対価として新型の戦闘機や機材を譲り受けた。

その後、特設巡洋艦に類別変更され、第二十二戦隊に来たる。日本国内の基地から出撃し、キスカ島に対する掃海任務や護衛任務にも参加した。また、アッツ島向けの資材輸送作戦にも従事し、アメリカ艦隊との交戦を経験。結果としてその作戦は中止となったが、事務職任務への復帰も果たす。

挑戦と戦闘

1943年にはアッツ島向けへの輸送任務が行われたが、アメリカ海軍との衝突が頻繁に発生し、艦隊運営が困難となる。10月には特設運送船に類別変更され、1944年にはエニウェトク環礁やトラック諸島への輸送任務を果たす。

同年の5月21日、アメリカの潜水艦による攻撃を受けた船団は、犠牲も伴う中で運行を続けていた。「浅香丸」は航行中に船団の肥大や速度の低下などの問題が重なり、緊迫した状況が続く中で活動を続けた。6月にはシンガポールに向かうヒ67船団に参加、その後ビンタン島からボーキサイトを搭載し再度出発。

最後の運命

1944年9月、アメリカ海軍による空襲が「浅香丸」に襲いかかり、投下された魚雷が船体を直撃。沈没する運命を辿ることとなり、1945年1月には正式に除籍が決定された。長い歴史の末、「浅香丸」は運命を全うし日本の海運史に名を刻むこととなった。

この船の艦歴は、日本の貨物輸送、戦局の変転における重要な役割を象徴している。特にアメリカとの接触や戦闘を通じて戦時中の状況が生々しく伝わってくる。日本の海運や軍事史の重要な一端を担った「浅香丸」の活動は、今なお多くの人々の記憶に留まっている。

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