浜口哲夫

浜口哲夫：テレビ界を彩ったプロデューサーの軌跡

浜口哲夫（1944年9月1日生まれ）は、日本のテレビ業界において多岐にわたる分野で活躍したプロデューサーです。元フジテレビ スポーツ局長、日本レースプロモーション社長、デジタル放送推進協会常務理事という肩書きが示すように、そのキャリアはバラエティ番組からスポーツ中継、そしてデジタル放送への移行という、テレビ業界の変遷そのものを体現しています。2020年10月からは、株式会社にっぽん市の取締役社長を務めています。

生い立ちと学歴

浜口は京都府舞鶴市で生まれました。父親は元海軍少佐で、海上自衛隊の創設に携わった人物。母親は熊野速玉大社の宮司の娘という家柄です。幼少期は父親の転勤に伴い、小学校を7回も転校するという経験をしました。その後、東京都立日比谷高等学校を経て、東京大学文学部西洋史学科を卒業。高校の同級生には町村信孝元衆院議長、大学の同級生には歌手の加藤登紀子などがいます。

フジテレビ入社とバラエティ番組制作

1968年にフジテレビに入社。当初は報道局を志望していましたが、編成局制作室第2演出部、いわゆるバラエティ番組制作の部署に配属されます。「スター千一夜」「ズバリ!当てましょう」「コント55号の世界は笑う」といった人気番組のアシスタントディレクター（AD）としてキャリアをスタートさせました。入社4年目には、早くもプログラムディレクター（PD）を任されるようになり、「芸能人オールスター夢の球宴」「芸能人オールスターゴルフ大会」といった企画を実現させました。

「オールスター家族対抗歌合戦」

浜口の代表作として知られるのが「オールスター家族対抗歌合戦」です。萩本欽一を司会に迎え、1972年にスタートしたこの番組で、浜口はADからディレクター兼プロデューサーへと昇進。1986年の番組終了まで、全699回の制作に携わりました。日曜夜8時という激戦区で、足かけ15年もの長寿番組となり、総平均視聴率は17.4%を記録しました。

スポーツ局での活躍

1987年、浜口はスポーツ局に異動します。そこで任されたのが、人気番組「プロ野球ニュース」の改革でした。佐々木信也の交代、スポーツ専用スタジオの開設、局アナウンサーの活用、女性キャスターや女性記者の起用など、大胆な施策を次々と打ち出し、多様化するスポーツ界に対応できる番組へと進化させました。その後、「プロ野球ニュース」は25年の歴史に幕を閉じ、「すぽると!」へとリニューアルされました。

また、浜口はテレビの「黄金ソフト」であったプロ野球の巨人戦中継やオールスターゲーム、日本シリーズの放送権獲得・維持にも尽力しました。1991年〜1992年には横浜大洋ホエールズ（現横浜DeNAベイスターズ）の球団経営改革プロジェクトに参加し、1998年のリーグ優勝・日本シリーズ優勝に貢献しました。

モータースポーツへの貢献

1991年、フジテレビに｢モータースポーツ事務局｣が新設され、浜口が初代事務局長に就任。「[F1グランプリ]]」の全レース独占放送を成功させました。さらに、「日本のモータースポーツの育成・確立」を目指し、中嶋悟、鈴鹿サーキットランドと協力体制を築き、1995年に日本レースプロモーション]を発足。1996年からは日本最高峰のフォーミュラカーレース「[[フォーミュラ・ニッポン」を運営しました。1999年から2001年まで、浜口はJRPの代表取締役社長を務めています。

2001年6月には、スポーツ局長に就任。2002年の日韓共同開催のワールドカップサッカーでは、日本対ロシア戦の中継放送権を獲得し、66.1％という驚異的な視聴率を記録しました。

地デジ化への貢献

2003年、浜口は社団法人デジタル放送推進協会（D-pa）に出向し、テレビ放送の完全デジタル化に向けた諸課題の解決に尽力しました。地上デジタル放送開始記念式典や、地上アナログ放送終了1ヶ月前の集いなど、数々のイベントを企画・実施し、地デジ化の推進に大きく貢献しました。

現在の活動

D-pa退任後、2016年に制作プロダクション「株式会社にっぽん市」を設立し、取締役社長に就任。J:COMコミュニティチャンネル「長っと散歩」やBSフジの「復活!オールスター家族対抗歌合戦」などの番組制作を手がけています。

人柄とエピソード

強面の風貌とは裏腹に酒が飲めず、涙もろい一面も持っています。三味線は名取の腕前で、伝統芸能にも造詣が深い人物です。また、芳野薫のペンネームで作詞家としても活動しており、北島三郎やヒデとロザンナなどの歌手に楽曲を提供しています。

「オールスター家族対抗歌合戦」の出演者とは家族ぐるみの付き合いが多く、番組を通じて築いた絆は今も続いています。地上デジタル放送普及促進キャンペーンでは、メインキャラクターを務めた草彅剛が不祥事を起こした際、降板を求める声を抑え、復帰後も無報酬でキャラクターを務めさせました。その姿勢は多くの人々に感銘を与えました。

浜口哲夫は、テレビ業界の黎明期からデジタル化の時代まで、常に時代の最前線で活躍し、数々の功績を残しました。その情熱と行動力は、多くの人々に影響を与え続けています。

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