浜松市立中央図書館

浜松市立中央図書館は、静岡県浜松市中央区にある公共図書館であり、浜松市内に展開する24館からなる浜松市立図書館の中央館としての役割を担っています。

歴史的経緯

浜松市における近代図書館の歴史は、明治時代に遡ります。1901年には敷知郡浜松町で浜松青年書籍館が設けられ、翌1902年には浜松女子尋常高等小学校内に浜松青年同志会附属浜松図書館が設置されました。しかし、これらの施設は蔵書数が少なく、活動には限界がありました。

市営図書館の誕生と戦災

大正期に入り、1911年の浜松市制施行を経て、より本格的な公立図書館への要望が高まりました。大正天皇御即位記念事業の一環として寄付が募られ、市費と合わせて1920年6月に浜松市立図書館が組織として設立されます。そして同年7月1日、かつて浜松医学校があった五社公園内の紺屋町に、先の私立図書館から引き継いだ約1000冊の蔵書を基盤として開館しました。戦前には約35,000冊の蔵書を有していましたが、太平洋戦争末期の1945年6月18日、浜松空襲によって建物も蔵書も全て焼失するという壊滅的な被害を受けました。

戦後復興と松城町旧館

終戦後、浜松市は深刻な人口減少に直面しましたが、図書館再建に向けた動きが始まります。1946年には旧海軍経理学校から譲り受けた約300冊を基に、市役所教育課内に仮設図書館が設けられました。1948年頃から本格的な再建計画が進められ、1949年度予算で建設が決定。浜松ユネスコ協力会による献本活動も展開されました。建物は、後の浜松市長となる栗原勝氏（当時市役所職員）が設計を手掛け、かつて明石邸別荘があった浜松城の出丸跡（松城町）に建設され、1950年11月20日に開館しました。この旧館は「東海一の図書館」と称され、文化センターとしても機能。レコードコンサート、映画会、講演会、展覧会など多岐にわたる催しが行われ、当時の市内に美術館や博物館がなかった中で、美術展なども開催されました。

蔵書数は開館当初約9,000冊でしたが、1964年度末には6万6千冊を超える規模に成長。市域の拡大に伴い、1951年には巡回文庫、1957年には移動図書館（自動車文庫）サービスを開始し、遠隔地への図書館利用を促進しました。館外貸出も段階的に拡大され、当初の社会人向け（小説・随筆のみ）から、全部分門、児童、学生へと対象が広げられました。手狭になった旧館に代わる新図書館の必要性が高まり、1975年の第二次浜松市総合計画にも盛り込まれました。

中央図書館の誕生と現行館へ

1974年4月、初の地区図書館である南図書館が開館したことに伴い、松城町の図書館は浜松市立中央図書館と改称されました。その後も次々と地区図書館が開設され、浜松市の図書館ネットワークが構築されていきました。そして、より大規模で近代的な施設の建設が進められ、1981年4月14日、市制施行70周年の記念すべき年に、同一敷地内に鉄筋コンクリート造りの現行館が開館しました。約14億円を投じて建設されたこの新館は、蔵書収容能力65万冊、冷暖房やコンピュータ設備を備えた当時最新鋭の施設でした。コンピュータシステムによる貸出・返却・検索機能は全国的に注目を集め、1989年には全館がオンラインで結ばれ、利用者用検索端末（OPAC）が設置されました。

システム統合と近年の動き

2005年には周辺自治体との合併を経て、市域が拡大しました。これに伴い、各地の図書館システムを統合する必要が生じ、2006年の城北図書館移転・拡充を機に、全21館・分室を統合する大規模なネットワーク化が実現しました。この時、浜松市立図書館の全蔵書約200万冊にICタグが貼付され、これは国内有数の規模となりました。また、2002年にはJR浜松駅前に駅前分室が開設され、予約資料の受取や返却など、通勤・通学で駅を利用する市民の利便性を高め、場所を移しながら現在もその役割を果たしています。

中央図書館は2021年5月から大規模な改修工事のため休館していましたが、2022年8月6日にリニューアルオープンし、引き続き浜松市の知の拠点として市民に利用されています。

もう一度検索