海ノ口城

海ノ口城（うんのくちじょう、うみのくちじょう）

海ノ口城は、現在の長野県南佐久郡南牧村海ノ口に位置していた日本の山城です。「海の口城」とも表記されることがあります。築城時期や廃城時期については、詳しい記録が残っておらず、不明とされています。しかし、この城は戦国時代の武将、武田信玄が初めて戦に臨んだ場所として、その名を知られています。

歴史

海ノ口城は、武田氏が信濃国を攻略する上で、重要な中継地、兵站基地としての役割を果たしました。特に、天文5年（1536年）の出来事は、この城の歴史を語る上で欠かせません。当時、甲斐の守護であった武田信虎は、8千の兵を率いて佐久方面へ出陣しました。対する佐久平賀城主、平賀源心（玄信）入道成頼は、2千の兵を率いて海ノ口城に籠城しました。

武田信虎軍は、36日間もの間、城を包囲しましたが、海ノ口城は容易には落ちませんでした。冬の到来を前に、信虎は一旦兵を退く決断をしました。しかし、この時、信虎の嫡男である晴信（後の武田信玄）が初陣を飾り、殿軍を申し出てわずか3百の兵で海ノ口城に奇襲を仕掛けました。この奇襲によって、難攻不落と思われた海ノ口城はついに落城しました（『甲陽軍鑑』より）。この戦いは、若き日の武田信玄の勇猛さを知らしめる出来事として、後世に語り継がれています。

その後も、海ノ口城は武田晴信の重要な拠点として幾度となく利用されました。天文12年（1543年）には佐久大井氏の攻略、天文15年（1546年）には内[[山城]]の攻略、天文17年（1548年）には上田原の戦いで敗北した後の佐久衆の反乱鎮圧、そして天文19年（1550年）には砥石崩れ後の村上義清による佐久への再侵攻など、様々な戦いの場面で、武田晴信の陣所として活用されたと伝えられています。このように、海ノ口城は武田氏の信濃攻略において、戦略上重要な役割を担っていたことがわかります。

現在

現在、海ノ口城の具体的な遺構はほとんど残っていませんが、その歴史的な価値は非常に高く、多くの歴史ファンや研究者によって注目されています。城跡は、静かな山中にあり、往時の面影を偲ばせる場所となっています。

参考文献

南原公平 著『信州の城と古戦場』 しなのき書房 2009年

外部リンク

信州の文化財を探す- 海ノ口城跡
* 城と古戦場

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