海上挺進部隊

海上挺進部隊：本土決戦に向けた海軍最後の望み

1945年5月20日、太平洋戦争末期の日本海軍は連合艦隊によって「海上挺進部隊」を編成しました。これは、大型艦艇の喪失や燃料不足など、劣悪な状況下で本土決戦に備えた、日本海軍最後の組織的行動が可能な水上部隊でした。

編成の背景：劣勢続く日本海軍

レイテ沖海戦や多号作戦での壊滅的な損害により、日本海軍は大型艦艇の多くを失い、残存艦艇も燃料不足で航行不能に陥るなど、深刻な状況にありました。特に、沖縄戦における坊ノ岬沖海戦で第二艦隊旗艦「大和」が沈没したことは、海軍の戦力をさらに弱体化させました。

この状況下、もはや特攻作戦が主体となりつつありました。航空特攻に加え、水上特攻、水中特攻など、あらゆる特攻兵器が準備、もしくは投入される事態に。大本営海軍部は6月12日、「決号作戦ニ於ケル海軍作戦計画大綱（案）」を策定し、本土上陸を目指す連合軍を阻止するべく、航空、水上、水中特攻を総動員する作戦計画を立案しました。計画では、上陸部隊の半数以上を撃破することを目標としていました。

海上挺進部隊の編成と任務

海上挺進部隊は、第三十一戦隊を基幹として、秋月型駆逐艦「夏月」、軽巡洋艦「北上」、峯風型駆逐艦「波風」などで構成されました。司令官には第三十一戦隊司令官の鶴岡信道少将が兼務。主任務は、連合軍の上陸部隊への邀撃奇襲と輸送作戦でした。しかし、燃料不足のため、合同訓練は行えず、呉港や柳井付近に停泊したまま、停泊訓練を繰り返す状況でした。

部隊には、人間魚雷「回天」を搭載した艦艇が多数含まれていました。「北上」は回天を8基搭載可能に改造され、他の駆逐艦も1～2基を搭載していました。作戦は夜間を主とし、回天発射後、母艦も砲雷撃を加える計画でした。しかし、終戦により、海上挺進部隊が出撃する機会はありませんでした。

海上挺進部隊の艦艇と装備

海上挺進部隊の主力艦は、軽巡洋艦「北上」でした。「北上」は回天発射母艦として改造され、対空火器を増強、揚収能力も強化されていました。駆逐艦は、秋月型、松型、峯風型など、比較的新しい艦艇と旧式艦艇が混在していました。これらの艦艇は、回天を1～2基搭載し、敵部隊に接近して回天を発射した後、砲雷撃を行う計画でした。

作戦計画と現実

海上挺進部隊の作戦計画では、瀬戸内海西部を拠点に、夜間行動で敵上陸部隊を攻撃することが想定されていました。祝島を中心とした半径180海里以内を活動範囲とし、燃料は1.5撃分（約3,500トン）を確保する計画でした。しかし、慢性的な燃料不足は部隊の行動を大きく制限し、作戦実施は困難な状況でした。呉[[軍港空襲]]による被害も、部隊の作戦能力をさらに低下させました。

結論：儚く消えた最後の抵抗

海上挺進部隊は、日本海軍の悲壮な末期を象徴する部隊でした。劣悪な状況下で、特攻作戦に全てを賭けた彼らの努力は、終戦によって無に帰しました。しかし、彼らの存在は、当時の日本海軍の絶望的な状況と、最後の抵抗の意志を物語る重要な歴史的証左と言えます。彼らの努力が報われなかったことは、歴史の残酷さを改めて認識させられる出来事です。

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