海上自衛隊の航空母艦建造構想

海上自衛隊の航空母艦建造構想について

海上自衛隊は、時代の流れや国際情勢の変化に合わせて、航空母艦やそれに準じた艦艇の建造を巡る構想を展開してきました。本記事では、航空母艦建造構想の歴史や背景、これまでの取り組みについて詳しく解説します。

護衛空母取得の試み

1950年代、日本の保安庁警備隊（後の海上自衛隊）は、旧帝国海軍との連続性を重視し、航空母艦の取得を目指しました。のちにY委員会が提案した新日本海軍再建案では、アメリカ海軍からの供与により護衛空母4隻の整備が盛り込まれましたが、要望が大き過ぎて受理されませんでした。1953年には具体的な運用構想が形を取り始め、対潜掃討群の中核艦として護衛空母の貸与計画が進められました。アメリカ側からは、海軍が飛行機を保有することの重要性が強調され、航空母艦の必要性が指摘されました。

しかし、当時の経済状況を考慮し、空母の受け入れは時期尚早であるとの結論に至り、計画は一時見送られました。

対潜掃討群とCVHの構想

1950年代後半から1960年代にかけて、海上自衛隊は新たな対潜掃討部隊の創設を模索し始めました。ヘリコプターを用いた新たな運用思想が生まれ、対潜ヘリコプター艦（CVH）の建設が計画されました。CVH案は、対潜掃討能力を強化するためのものであり、特に新型対潜哨戒機やヘリコプターの搭載を重視しましたが、最終的にいくつかの障害が立ちはだかり、実現には至りませんでした。

8艦6機体制とDLHの検討

その後、また新たな艦隊構成となる8艦6機体制が策定され、護衛艦群の運用能力を高めるための計画が進められました。4次防では、艦隊防空や対潜掃討群用の大型護衛艦（DLH）が構想されました。DLHは、VTOL機の導入も視野に入れた設計となり、将来にはハリアーなどが運用される可能性が模索されましたが、費用面や技術的課題から計画は進展しませんでした。

政治的な障害と初期計画の挫折

1970年代には「シーレーン1,000海里防衛」という新たな防衛概念が重視され、海上自衛隊は洋上防空能力の強化に努め始めました。しかしながら、歴代防衛大臣や関係者の間には空母導入についての意見が分かれ、現実的な運用にあたっては非常に高いコストと、政治的な反発を受ける恐れが常に存在していました。また、他国との関係性や国際的な軍事バランスを考慮した場合、戦略的な選択肢は常に限定的でした。

現代における空母化の動き

2010年代に入ると、中国の海洋活動や周辺国の軍備増強が懸念される中で、日本も海上自衛隊の能力強化を図る必要性がますます高まっています。この中で、いずも型護衛艦にF-35B戦闘機を搭載する案が浮上しました。これにより、海上自衛隊は空母機能の強化を進めるとともに、国際的な役割を果たすことを目指しています。

まとめ

海上自衛隊の航空母艦建造構想は、時代ごとの国際事情や国内の防衛の必要性に応じて進化してきました。航空母艦を巡る様々な議論や提案はあるものの、その実現には予算や政策の調整、さらには国際的な理解と支持が必要となるでしょう。今後も海上自衛隊の運用能力を高め、地域の安全保障に寄与するための方策が求められることは間違いありません。

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