海上警備隊

海上警備隊：海上[[自衛隊]]設立への礎

1952年（昭和27年）4月26日から7月31日まで、海上保安庁内に設置されていた海上警備隊は、日本の安全保障史において重要な役割を果たしました。その存在期間は短かったものの、後の海上[[自衛隊]]へと発展する礎を築いた組織として、その歴史と背景を知ることは、現代日本の防衛体制を理解する上で不可欠です。

誕生の背景：戦後日本の安全保障と旧海軍の影

第二次世界大戦の終戦後、日本は連合国軍の占領下に置かれ、軍隊の保有を禁止されました。しかし、朝鮮戦争の勃発など国際情勢の激変を受け、日本の沿岸警備の強化と、将来的な防衛力の再構築が喫緊の課題となりました。この状況下、旧海軍の軍人たちが中心となり、海上警備隊の設立に向けた動きが水面下で進められました。

彼らは、GHQ（連合国軍最高司令官総司令部）やアメリカ極東海軍司令部との密接な連携を通して、再軍備の可能性を探っていました。海上保安庁という文民組織の中に、旧海軍の経験と知識を活かした組織を設立することで、潜在的な防衛力を温存しつつ、国際的な反発を避ける巧妙な戦略が用いられました。

Y委員会：秘密裏に進められた再軍備計画

海上警備隊の設立は、Y委員会という極秘組織によって推進されました。Y委員会は、旧海軍出身者と海上保安庁関係者から構成され、アメリカ合衆国から貸与される艦艇の受入れと運用体制の確立を任務としていました。

委員会では、旧海軍の軍人たちが中心となって、将来的な防衛力強化を見据えた計画が策定されました。彼らの多くは、日本周辺海域の安全保障に関する豊富な経験と知識を有しており、その専門性が海上警備隊の設立に大きく貢献しました。しかし、委員会の活動は極秘裏に進められており、その全貌は現在でも明らかになっていません。

海上警備隊の設立とその後

1952年4月26日、海上警備隊が正式に発足しました。その定員は約6,000名で、幹部と下士官の大部分は旧海軍出身者でした。しかし、発足当初は、艦艇の整備が間に合わず、実質的な運用は遅れました。

海上警備隊は、海上における人命や財産の保護、治安維持を任務としていましたが、その実態は、将来的な海上防衛力の母体となる「スモール・ネイビー」を目指した組織でした。このことは、発足から僅か3ヶ月後の8月1日、海上警備隊が海上保安庁から独立し、保安庁警備隊となったことからも明らかです。

そして、1954年7月1日、保安庁警備隊は防衛庁（現在の防衛省）に移管され、海上[[自衛隊]]へと発展を遂げました。海上警備隊は、短命に終わった組織ではありましたが、戦後の日本の安全保障体制の構築において、大きな役割を果たしました。

国会での論議：再軍備への懸念と説明

海上警備隊の設立は、国会においても大きな論議を呼びました。特に、再軍備への懸念が強く、政府は海上警備隊の任務を、あくまで沿岸警備や治安維持に限定するものとして説明する必要がありました。国会答弁では、密入国阻止や漁業保護、大規模災害への対応といった具体的な事例が挙げられ、国民の不安を払拭しようと試みました。

しかし、旧海軍出身者の多くが中心となって組織された海上警備隊の設立は、再軍備への一歩との見方も根強くありました。この論議は、戦後の日本における安全保障政策のあり方について、国民的な議論を促す契機ともなりました。

海上警備隊の組織と人事

海上警備隊の組織は、総監部と地方監部から成り、旧海軍の軍制を踏襲した面が見られました。しかし、海上保安庁との間では人事抗争も発生し、旧海軍出身者と海上保安庁出身者の間で激しい主導権争いが繰り広げられました。これらの内部抗争は、海上警備隊の設立と発展に影を落とすことになりました。

結論：日本の安全保障体制の礎

海上警備隊は、戦後の混乱期に誕生し、短期間でその役割を終えた組織です。しかし、その存在は、日本の安全保障体制の構築に大きく貢献しました。旧海軍出身者の経験と知識、アメリカ合衆国の支援、そして日本の安全保障政策に対する国民の意識、これらが複雑に絡み合い、海上[[自衛隊]]誕生の物語を彩りました。この歴史を理解することは、現代日本の防衛政策を考える上で非常に重要です。

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