海人部

海人部（あまべ）について

概要

海人部は大化の改新以前に存在した日本の職業集団で、海の近くに住んでいました。彼らは主に海産物を生産し、中央政府に貢納することで知られています。「海人」という名称は、「海」「海士」「白水郎」にも関連し、彼らが漁業や航海にかなりの技術を持っていたことを示しています。海人部は優れた航海技術を活かして朝廷に奉仕し、大陸や朝鮮半島との交易にも関与していました。

海人部は遠江国、信濃国、越前国を中心に分布し、特に紀伊国、淡路国、阿波国、吉備国が代表的な地域として挙げられます。これらの地方では、海部直（あまのあたい）、海部首（あまのおびと）、海部公（あまのきみ）などという肩書を持つ首領が存在し、海部の組織は、尾張氏や吉備氏といった伴造に従属していました。

安曇氏と海部との関係

安曇氏は、海人の暴動を鎮めたことで「海人の宰」として記録されています。『日本書紀』の中で、彼らが海人を統治する役割を果たしたことが記されており、同時期に海部も成立したため、安曇氏は海部における伴造と考えられています。

ただし、安曇氏が海人を完全に統括していたわけではなく、各地の海部は独自の発展を遂げていました。海部に所属する人々は、尾張氏や吉備氏をはじめとする他の氏族との関係もあり、時には安曇氏と結びつくこともありましたが、全ての海人を支配していたわけではないのです。彼らは個別に日本各地で独立した集団として存在し、中央政権に組み込まれる前から地域社会の一部を形成していました。

考証

『古事記』や『日本書紀』によると、応神天皇の時代に海人部の組織化が進んでいたことが示されています。この時期は、日本が半島へ進出していた時代であり、水軍としての海人の重要性が高まっていました。資料には、海人が異なる言語を使用しており、支配者層と異なる文化背景を持っていたことが示唆されています。

さまざまな伝承によると、海人部は特有の風習を持ち、入れ墨をする慣習があったと考えられています。『魏志倭人伝』にもそのような習慣が記述されており、海人部の文化的側面を理解する手がかりとなります。

また、阿曇連氏は海人部を管理しており、天武天皇の時代には宿禰の姓を得ることで、その地位をさらに固めました。これにより海人部が持つ文化や職務と、彼らを管理する氏族との関係が明らかになってきます。

まとめ

海人部は日本古代の海辺に生きる人々であり、政治的、経済的に重要な役割を果たしました。彼らの存在は漁業技術や航海術に限らず、日本の多様性や文化形成においても大きな影響を与えました。海人部の歴史を探ることで、当時の社会構造や文化、さらには地域ごとの独自性を知る手がかりが得られます。古代の文献が伝える海人部の姿は、現代においても重要な研究対象の一つです。

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