海守

海守（うみもり）とは

海守は、2003年から2015年まで活動していた日本のボランティア自警団です。海上保安庁の公認を受け、財団法人海上保安協会が日本財団の助成を受けて運営していました。その設立趣旨は、118番通報制度の普及を通じて、海からの脅威や不審船の密航に対する警戒を促すことにあり、民間防衛組織としての側面を持っていました。

設立の背景

2001年の九州南西海域工作船事件や、その後の北朝鮮による日本人拉致問題、そして沿岸地域での密漁や密入国の横行といった出来事が、海守設立のきっかけとなりました。これらの問題に対し、既存の海上保安庁の体制だけでは十分な対応が困難であると考えられました。広大な海岸線と排他的経済水域を有する日本では、海上保安庁の力だけでは海の安全を確保するには限界があり、増え続ける脅威に対応するため、民間人の協力が不可欠であるとの認識が広まりました。

そこで、曽野綾子氏が代表を務める日本財団の支援のもと、2003年に「海守」が結成されました。事務局は財団法人海上保安協会に置かれ、設立と同時に海上保安庁長官との間で覚書が交わされ、海上保安庁公認のボランティア団体として活動を開始しました。

活動の目的と内容

海守は、海上保安庁の118番通報制度を広く社会に周知し、日頃から海に目を向ける民間人を増やすことで、日本に「海を見守る情報ネットワーク」を構築することを目標としていました。既に存在していた海事関連事業者による「沿岸協力会」などの市民団体と連携し、海上の安全確保に貢献することを目指しました。

海守の会員は、個人的な範囲で海を警戒し、不審船や密漁、不法投棄などの海上犯罪、または水難事故を発見した場合、118番に通報することが主な活動内容でした。会員には義務は課せられず、あくまでボランティアとして活動していました。

組織としての活動としては、会員間の親睦会や、海上保安庁の施設見学、体験航海などの研修が実施されました。また、石油流出事故などの災害時には、ボランティアとして活動するための訓練も行われました。

事務局は、ウェブサイトやブログを通じて情報発信を行い、会員にはメールマガジンを毎週配信していました。事件発生時には、捜査協力のための広報文が配信されることもありました。

組織の終焉とその後

118番通報制度の認知度が向上し、各地で会員による活動が定着したことから、2014年1月31日に新規会員募集を停止し、2015年3月31日をもって事務局が廃止されました。しかし、「海守」の商標権は海上保安協会に引き継がれました。

海守の特徴

民間主導の組織：海上保安庁の公認を受けているものの、活動は民間人のボランティアによって行われていました。
118番通報の推進：海上での事件や事故の早期発見、通報を促すことで、海の安全確保に貢献しました。
情報ネットワークの構築：日常的に海を監視する民間人を増やし、海上保安庁と連携して情報共有を行いました。
会員の自由な活動：会員は義務を負わず、各自ができる範囲で活動していました。

協力機関

海守は、以下の機関と協力関係にありました。

海上保安庁
都道府県警察本部
日本水難救済会
海洋政策研究財団（笹川平和財団海洋政策研究所）
日本海事広報協会
日本海難防止協会
海上災害防止センター
船の科学館
日本漁業協同組合連合会
日本マリーナビーチ協会

海守は、その活動を通じて、国民の海に対する関心を高め、安全な海を守るための重要な役割を果たしました。

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