海老坂武

海老坂 武 - フランス文学者・評論家

海老坂武（えびさか たけし、1934年12月7日生まれ）は、日本を代表するフランス文学者および評論家です。彼は東京・大森で生まれ育ち、東京都立小山台高等学校を経て東京大学に入学しました。在学中は東京大学運動会の硬式野球部に在籍し、一番打者として活躍、さらには1956年秋のリーグ戦での東大通算100勝へ貢献しました。シーズンによっては当時の名選手長嶋茂雄よりも高い打率を記録することもあり、その俊足での活躍が評価され、1957年春のリーグ戦では、歴代最多盗塁記録を樹立するなど、野球選手としても名を馳せました。

1959年に東京大学の文学部フランス文学科を卒業した後、彼は1963年から2年間のフランス留学を経て、東京大学大学院の博士課程を単位取得後に退学しました。1966年からは一橋大学で教職を持ち、その後教授に昇進します。彼は1996年に定年退官し、関西学院大学文学部で教授を務め、2003年に退職しました。退職後は東京や芦屋、那覇、さらにはパリを行き来しながら執筆や翻訳に専念しています。

彼の研究対象はジャン＝ポール・サルトルやフランツ・ファノンなどに及びます。海老坂は翻訳や評論活動においても高く評価され、1986年に刊行した『シングル・ライフ』が大ヒットし、多くの読者に影響を与えました。この作品では独身生活に対する新たな視点を提案し、愛や人間の関係について思索を深めました。2022年には鈴木道彦らと共訳したジャン＝ポール・サルトルの『家の馬鹿息子 ギュスターヴ・フローベール論』が日本翻訳出版文化賞を受賞するなど、その活動は多方面にわたります。

彼の著作は非常に多岐に渡り、以下のような研究やエッセイが残されています。

• - 『否認の言語へのノート』 （1971年、晶文社）
• - 『パリ - ボナパルト街』 （1975年、晶文社）
• - 『パリの路上から - ノートルダムでもなくセーヌでもなく』 （1978年、河出書房新社）
• - 『戦後思想の模索 - 森有正、加藤周一を読む』 （1981年、みすず書房）
• - 『雑種文化のアイデンティティ - 林達夫、鶴見俊輔を読む』 （1986年、みすず書房）
• - 『シングル・ライフ - 女と男の解放学』 （1986年、中央公論社）
• - 『サルトル - 「人間」の思想の可能性』 （2005年、岩波新書）
• - 『生きるということ モンテーニュとの対話』 （2024年、みすず書房）

彼はまた共著や編著としても多くの書籍を出しており、翻訳においても『黒い皮膚、白い仮面』や『もう一人のサルトル』など、サルトルやファノンの作品を日本に紹介しました。海老坂武は、現代日本におけるフランス文学の普及と理解に貢献してきた重要な存在であり、その業績は今後も多くの読者に影響を与え続けることでしょう。

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