海老澤為次郎

海老澤爲次郎

明治維新の前年、慶応元年（1865年）8月12日に茨城県猿島郡境町船戸に生まれた海老澤爲次郎は、日本の実業界および政界で活躍した人物です。族籍は茨城県の平民でした。父は海老澤七三郎といい、為次郎は次男として生を受けました。

経歴

家業は呉服商を営んでおり、為次郎は明治21年（1888年）に家督を相続し、その事業を引き継ぎました。事業を営む傍ら、為次郎は早くから地元政界での活動を開始します。

まず、出身地である境町の町政に関わり、境町会議員や同町農会長を務めたほか、学務委員としても地域の教育振興に貢献しました。また、境町外十七箇村組合会議員として、広域での行政課題にも取り組みました。さらに、猿島郡農会議員として、郡レベルでの農業振興にも尽力しています。

地方政治における活動は県レベルにも及び、茨城県会議員に選出されました。県議会では要職を歴任し、副議長を経て議長に就任するなど、県政の中心人物の一人として手腕を発揮しました。

県政での実績を背景に、為次郎は国政への進出を目指します。大正6年（1917年）4月の衆議院議員選挙に挑戦しましたが、この時は当選に至りませんでした。しかし、諦めることなく政治活動を続け、昭和3年（1928年）2月の衆議院議員選挙で初当選を果たしました。衆議院議員としては二期の当選を重ね、立憲民政党に所属しました。

また、実業家としても、境商業銀行の頭取を務めたほか、大日本証券信託の取締役や上毛モスリンの監査役など、複数の企業の役員を兼任し、経済界においても一定の役割を担いました。

人物

為次郎は、知的好奇心に富んだ人物であったようです。趣味は談論、読書、そして政治研究であり、深い思索と議論を好んだことがうかがえます。宗教は真言宗を信仰していました。

主な居住地は郷里である茨城県猿島郡境町でしたが、東京にも邸宅を構えており、東京市下谷区上野桜木町にも住所がありました。これは、国政に携わる上での活動拠点であったと考えられます。

家族・親族

海老澤家は、父七三郎のもと、為次郎の他に妹や弟がいました。妹は茨城の岡田勘左衛門に嫁ぎ、弟の重五郎は青木貫四郎の養子となり、新七郎は篠塚伊惣次の養子となっています。弟の新七郎は古河町の町会議員や肥料商として活動しました。

妻はきん（1866年生）といい、茨城の増田八郎の妹です。子女としては、長男の迪雄（1905年生）、男の秀夫（1908年生、大谷重工社員）、そして四女の馨（1901年生、新潟の古橋才次郎の妻）がいました。孫もいたことが確認されています。

また、海老澤家には養子が複数おり、もと（1873年生、茨城の海老澤七左衛門の妻）や廉介（1886年生、分家）などがいました。

為次郎は昭和19年（1944年）2月13日に78歳でその生涯を閉じました。郷里の発展に貢献し、国の政治にも関わったその生涯は、激動の時代を生きた一商人・政治家として記憶されています。

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