海老責

江戸時代の拷問法「海老責め」

江戸時代における拷問の一つである「海老責め」は、当時の刑罰制度の過酷さを物語るものでした。この拷問法は、江戸幕府の規範である『御定書百箇条』にも記されており、笞打ちや石抱きといった予備拷問に屈せず、自白しない罪者に対して用いられました。さらに、海老責めが行われても自白しない場合には「釣責」という別の拷問が実施されることとなります。

海老責めの手順

海老責めは、まず囚人の衣服を取り去り、下着姿にした後、あぐらをかかせて後手に縛り上げます。両足首は結びつけられ、縄が股をくぐり、背中から首の両側を通って胸の前に掛けられます。この縄は、最終的に再度両足に結びつけられるため、囚人は顎と足首が密着した二つ折りの姿勢にされます。この独特の姿勢が海老のように見えることから、「海老責め」と名付けられたともいわれています。また、さらに別の説として、拷問中に助けられず、徐々に血行が悪くなることで、体が茹でた海老のような色に変わっていくことに由来するとも考えられています。

拷問の過程

海老責めの過程では、囚人はこの緊縛の姿勢のままで3〜4時間放置されます。最初の30分は耐えられる程度の窮屈さですが、時間が経つにつれて血行が停滞し、次第に耐え難い苦痛が襲ってきます。それに加えて、箒尻という特別な道具を使った打撃が加えられることもあり、これが深刻な裂傷をもたらすこともあります。

全身の皮膚が赤くなった後は紫色に変わり、最終的には蒼白となります。この変化が見られた段階で、拷問を中止すべきとされていました。それ以上続けると、生命に危険が及ぶからです。意識が麻痺したようになり、動くこともままならなくなり、最後には牢屋に運び込まれることになります。犠牲者が回復するには多くの日数を要しますので、繰り返し拷問することはできません。また、笞打ちや石抱きを行った後、身体が回復してから数日後に初めて実施することが許されていました。

拷問法の考案者

この拷問法は、当時非常に厳格な取締りを行っていた火付盗賊改方の長官である中山勘解由によって考案されました。彼は1683年に悪名高い凶賊である鶉権兵衛を取り扱う際にこの拷問法を用いました。

江戸小伝馬町にあった牢屋敷の拷問蔵で実行され、被疑者が意識を失いそうになると、水をかけて意識を戻し、砂を撒いて血を止めることで拷問を継続していました。江戸時代の犯罪捜査において、拷問で死なせることは倫理的には避けるべきとされていましたが、海老責めや石抱きのような過酷な手法が実践されると、特に犯罪傾向が深刻な場合には拷問による死亡も許容されている状況があったのです。加えて、「察斗詰」と呼ばれる制度も存在し、拷問において自白しない容疑者は老中の裁可を経た上で処刑されることが認められていました。

参考文献

• - 『江戸の名奉行』丹野顯著 新人物往来社 ISBN 978-4-404-03571-4
• - 『江戸刑事人名事典 火附盗賊改』 釣洋一著 新人物往来社 ISBN 4-404-03411-3
• - 『江戸牢獄・拷問実記』 横倉辰次著 雄山閣 ISBN 4-639-01812-6

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