海賊党

海賊党：デジタル時代の政治運動

海賊党は、2006年にスウェーデンで誕生した政治運動であり、著作権法改正への反対を主な目的としていました。その後、ヨーロッパを中心に世界各地に広がり、現在では70カ国以上で活動しています。その名の通り、著作権を無視した海賊版文化に由来するこの党は、当初、ファイル共有や私的複製を擁護するシングルイシュー政党と見なされることもありましたが、実際には民主主義、情報公開、プライバシー保護といった幅広い政策を掲げています。

海賊党の歴史

海賊党は、スウェーデンのリッカルド・ファルクヴィンゲによって創設されました。2009年の欧州議会選挙で2議席を獲得したことをきっかけに、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国で党が設立されました。2014年には欧州議会選挙で多数の候補者を擁立するために、欧州海賊党（PPEU）がブリュッセルに設立されました。しかし、2014年の選挙ではスウェーデンからの議席を失ったものの、ドイツからは初の女性議員が誕生しました。

ドイツのフェリックス・レダ議員は、海賊党が民主主義を守る政党であることを主張しましたが、後に党本部を批判し、左翼系諸党派へと移動しました。日本人留学生の西山里緒は、レダ議員事務所で研修生として勤務し、日本の海賊党団体との関係も公表しました。レダ議員は後に「海賊党は包括政党を目指すべきではない」と主張し、欧州緑の党との連携を深めました。このため、ドイツ海賊党内ではレダ批判勢力が形成されました。

2015年には、欧州海賊党（PPEU）の活動が停止し、国際海賊党連盟（PPi）の総会では日本人女性が幹部会役員に選出されました。また、日本海賊党（須澤党）の代表者が国際会議で不規則発言を行い、代表権変更を要求しましたが、却下されました。

アイスランド海賊党は国際海賊党連盟を脱退し、スウェーデン海賊党も離脱しました。カナダ海賊党も国際海賊党連盟から脱退しました。アイスランドでは2016年の総選挙で、海賊党が閣僚を出す可能性もありましたが、最終的には実現しませんでした。

2017年時点で、チェコ海賊党やアイスランド海賊党が国政レベルで議席を持っています。2020年5月現在、欧州議会での議席はドイツからの1議席のみで、欧州緑グループ・欧州自由連盟（Greens-EFA）に所属しています。

海賊党の政策

当初、海賊党は著作権侵害に対する抗議運動を背景に、著作権法と特許法違反への刑事罰に反対し、知的財産権の保護期間延長に反対していました。その後、党員が増加するにつれて、人権尊重、民主主義の徹底、知の自由な共有、プライバシー保護、政治の透明性、ネットワーク中立性などを主張するようになりました。また、草の根民主主義を重視し、左右の政治的立場とは異なる形で正当な民主政治を発展させることを目指しています。

海賊党の特徴

海賊党は、若い世代やIT技術者からの支持が厚く、インターネットなどの電子技術を政治に活用する点で優位性を持っていましたが、他党も同様の手法を取り入れたため、この優位性は失われつつあります。特にドイツでは、海賊党が躍進した後、左翼党が支持を伸ばし、州政府で政権与党となるなど、影響力の変化が見られます。

また、海賊党は政治的意思決定にリキッド・フィードバック（LqFB）と呼ばれるアプリケーションを導入しようとしましたが、うまくいかなかったようです。液体民主主義などの新たな投票方法は他の政党でも試みられていますが、まだ実験段階です。

海賊党運動の国際的な広がり

国際海賊党連盟（PPi）や「国境のない海賊」などが国際的な活動を担っています。欧州海賊党（PPEU）は一時的に活動しましたが、その後は停止しています。

日本国内での運動

日本国内では、かつて多数の海賊党を名乗る団体が存在しましたが、多くが解散しました。東京都港区に本部を置く海賊党は、国際海賊党連盟（PPi）に加盟し、国際会議に代表団を派遣していますが、選挙には一度も公認を出していません。年間100回程度の会合を開き、地域の問題に取り組んでいます。実名を使わない参加も認めており、開かれた運動であることを主張しています。また、機関誌も発行しています。

東京都千代田区に本部を置く日本海賊党は、YouTubeで情報発信を行っていましたが、2015年に解散しました。須澤秀人代表はNHKから国民を守る党の公認候補として出馬しましたが、落選しています。その後、チェコ海賊党の躍進を見て活動を復活させ、希望の塾の活動家を議員候補として推薦しています。

海賊党は、デジタル時代における政治運動のあり方を模索し続ける政党であり、世界的な広がりと同時に、各国内部での変化や他党との関係など、複雑な状況にも直面しています。

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