海軍戦術情報システム

海軍戦術情報システム（NTDS）

海軍戦術情報システム（Naval Tactical Data System, NTDS）は、アメリカ海軍のC4Iシステムの一部として機能し、戦闘指揮所（CIC）の自動化を進めるためにデジタルコンピュータを活用した情報処理装置です。このシステムは、戦術データ・リンクを通じて、複数の艦船間で目標情報を共有し、共通戦術状況図（CTP）を作成する思想を基に構築されました。

開発の背景

第二次世界大戦後、アメリカ海軍はレーダーシステムの限界に直面しました。特に、戦闘情報センターにおいて、熟練したオペレーターでも同時に処理できる目標数は限られており、1960年代にもその課題は解決されていませんでした。この状況を受けて、1949年よりアメリカ海軍電子工学研究所（NEL）が中心となり、情報処理の自動化に向けた研究が始まりました。

その後、1954年にリンカーン研究所と連携し、SAGEシステムの海軍向け応用を目指す「ランプライト計画」が発足しました。この計画の中で、特定の艦に依存するのではなく、システム搭載艦がどの艦でも指揮艦として機能できることが求められました。この思考を元に、1955年には運用・技術要求仕様が開発され、1963年にはNTDSの艦隊配備が承認されました。

システム構成

NTDSは戦術情報処理システムとして設計され、複数の派生型が確認されています。特に、チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦向けのJPTDSやオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート向けのJTDSがあり、これらは後にCDS（combat direction system）と総称されます。ハードウェアには、当初AN/USQ-17コンピュータが用いられていましたが、能力不足が懸念され、CP-642や最終的にはAN/UYK-7が主流となりました。

ソフトウェアはモデル管理が行われ、航空母艦や駆逐艦、フリゲートに適応されたアプリケーションがモジュールとして組み込まれました。例えば、TEWA（Threat Evaluation and Weapon Assignment）は、重要なモジュールとして機能しました。継続的なバージョンアップを経て、性能向上が目指されました。

戦術データ・リンクと派生型

NTDSのもう一つの重要な機能は、艦船同士の戦術情報を迅速に共有することです。これには戦術データ・リンクが用いられ、双方向通信を基本としたリンク11などが構築されました。海兵隊向けにMTDS（Marine Tactical Data System）、空母航空団向けにはATDS（Airborne Tactical Data System）が開発され、様々な戦局に対応可能なシステムが求められました。

もともと対空戦に注力していたため、対潜戦にも応用が進み、ASWシステムがテストされました。最終的には、NTDSは多くの西側諸国の艦船に導入されることになりました。フランス、イタリア、ドイツ海軍などが独自のシステムを開発し、NTDSの技術は国際的に広まりました。

このように、海軍戦術情報システムは、デジタル化された戦術情報処理の中核を担い、現代の海軍作戦において不可欠な要素となっています。

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