深芳野 (斎藤道三側室)

深芳野：斎藤道三と斎藤義龍を繋ぐ謎の女性

戦国時代、美濃国の戦国大名・斎藤道三の側室として知られる深芳野。彼女の子である斎藤義龍は、後に道三を殺害することになる人物です。深芳野自身については、生没年を始め、多くの謎に包まれた女性です。

複数の史料における記述の混乱

深芳野の名前は、様々な史料にそれぞれ異なる表記で登場します。例えば、『美濃国諸旧記』では「深芳野」、『美濃国諸家系譜』では「美吉野」、また『濃陽諸士伝記』では「三芳野」など、複数の表記が存在し、その出自や生涯についても複数の説があります。

深芳野の出自と道三との関係

一部の史料では、深芳野は当初土岐頼芸の妾であったとされ、後に斎藤道三に与えられたと記されています。道三のもとで義龍を出産したとされており、『美濃国諸旧記』では、大永6年（1526年）12月に道三に与えられ、翌年6月10日に義龍が誕生したとされています。

深芳野の出自についても諸説あり、「美濃国諸家系譜」は稲葉通則の娘、「土岐累代記」は丹後国宮津の城主一色左京大夫の娘であると記しています。しかし、これらの記述の裏付けとなる確固たる証拠は現時点ではありません。

義龍の父をめぐる論争

一部の史料は、道三が義龍よりも実子である弟たちを偏愛していたこと、そして義龍が自身の父が頼芸であることを知ったことで、父を殺害したという説を提示しています。しかし、これは江戸時代中期以降に創作された可能性が高いとされています。

実際、『信長公記』『信長記』『武家事紀』といった初期の史料には、深芳野の存在や、義龍が道三の嫡子ではないという記述は見当たりません。深芳野に関する多くの記述は、義龍の道三殺害という結果を説明するために、後世に創作された可能性が高いのです。

深芳野を演じた女優たち

深芳野は、数々の時代劇作品で取り上げられてきました。NHK大河ドラマ『国盗り物語』では三田佳子、『戦国乱世の暴れん坊 齋藤道三 怒涛の天下取り』では秋吉久美子、『麒麟がくる』では南果歩など、多くの著名な女優が深芳野を演じています。これらの作品は、史実に基づきながらも、脚色された深芳野像を提示していると言えるでしょう。

まとめ

深芳野は、史料によって記述が異なり、その実像は謎に包まれています。彼女に関する記述の多くは、義龍の父である道三を殺害したという事実を説明するために、後世に創作された可能性が高いと考えられています。深芳野という人物、そして彼女の息子である義龍の生涯は、今もなお歴史研究者たちの興味を惹きつけ、様々な解釈を生み出していると言えるでしょう。今後の研究によって、彼女の実像がより明確に解明されることを期待したいです。

もう一度検索