清原武則

清原武則：前九年の役を勝利に導いた出羽の豪族

清原武則は、平安時代中期に活躍した謎多き武将です。生没年をはじめ、詳細な記録は少ないながらも、前九年の役における功績から、その存在感は大きく、東北の歴史において重要な人物と言えるでしょう。彼は出羽の有力豪族、清原氏の出身で、父や母については諸説あり、はっきりとはしていません。

前九年の役と清原氏の役割

11世紀半ば、陸奥国では安倍氏と陸奥守との間で激しい戦いが勃発しました。これが前九年の役です。当初、陸奥守の源頼義は安倍氏を相手に苦戦を強いられました。そこで頼義は、安倍氏以外の俘囚系の豪族への協力を得る戦略に出ます。

清原氏もまた、頼義から度重なる協力を求められました。頼義は清原光頼に対して臣下の礼をとってまで参戦を要請したと伝わっています。最終的に清原氏は参戦を決意し、光頼は弟である武則を総大将に任命、大軍を陸奥に派遣しました。

清原氏の大軍の参戦は、頼義にとって大きな転機となりました。それまで劣勢だった源氏軍は、清原氏と肩を並べるほどの戦力を持つこととなり、戦局は大きく変化しました。武則の指揮の下、源氏軍は安倍貞任を捕らえ、安倍氏を滅ぼすことに成功します。

武則の功績と清原氏の繁栄

安倍氏滅亡という大きな功績により、武則は従五位下鎮守府将軍に任ぜられました。これは蝦夷の流れを汲む俘囚出身者としては初めてのことであり、武則と清原氏の地位を大きく高めました。前九年の役後、清原氏は出羽のみならず陸奥にも勢力を拡大し、黄金時代を迎えたのです。武則の本拠地については諸説ありますが、金沢柵（秋田県横手市）にあったという説が有力です。

武則配下には深江是則という武将がいました。彼は、元慶の乱で俘囚として登場する深江弥加止の子孫であると考えられています。武則の活躍は、単に軍事的な成功だけでなく、清原氏の社会的地位向上、そして東北における勢力拡大に大きく貢献したと言えるでしょう。

系譜と謎めいたつながり

1990年代以降、武則と海道平氏（岩城氏）との関係を示唆する説が唱えられました。しかし、これは史実とは考えにくく、源頼俊による清原氏と海道平氏との同族的連合の形成といった歴史的事実が、後世の誤解を生んだ可能性が高いと言われています。

『続群書類従』や『百錬抄』といった史料には、武則の子である武衡が平姓を名乗っていたことが記されています。このことから、清原氏と海道平氏の間で養子縁組が行われた可能性が示唆されています。この養子縁組は、両氏間の緊密な関係を構築する上で重要な役割を果たしたと考えられます。

武則の子供たちについては、武衡、家衡、武貞、武忠、武道、公清などの名前が伝わっています。また、娘も複数いたと推測されています。その中には、吉彦秀武の妻や、平貞衡の妻となった人物も含まれている可能性があります。

伝説とその後

栃木県壬生町の雄琴神社には、寛治5年（1091年）に武則の子孫である清原保定が神社を建立したという伝説が残っています。清原武則の生涯は、史料が不足している部分も多く、謎に包まれた部分も多いですが、前九年の役における活躍は、東北の歴史に大きな足跡を残しました。彼の功績は、後世の人々に語り継がれ、様々な伝説や解釈を生み出してきたのです。

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