清見

清見：日本の柑橘育種史に名を刻むタンゴール

清見は、ミカン科ミカン属の常緑小高木で、柑橘類の一種です。温州みかんと外国産のトロビタオレンジという、異なる柑橘類の交配によって生まれた、日本で初めて育成・発表されたタンゴールとして知られています。その名前の由来は、育成地である静岡市清水区の地名「清見潟」と「清見寺」にちなみます。地域によっては「清見タンゴール」と呼ばれることもあります。

特徴：温州みかんとスイートオレンジの中間

清見の果実は、温州みかんとスイートオレンジ両方の特性を受け継いでいます。平均で約200gと、程よい大きさの扁球形をしています。果皮は濃橙[[色]]で滑らか、果肉は柔らかく、果汁も豊富です。皮を剥くのは温州みかんに比べるとやや難しいかもしれません。糖度は11～12度と高くはありませんが、成熟期のクエン酸含有量は約1％とバランスが良く、爽やかなオレンジの香りが特徴です。そのため、食味は非常に良好と評価されています。

主な産地は愛媛県、和歌山県、佐賀県、広島県で、3月が収穫期となります。樹木は寒さにも比較的強く、かいよう病にも強い抵抗性を持ちます。さらに、そうか病にも抵抗性があることから、栽培しやすい品種と言えるでしょう。

栄養価も高く、ビタミンCだけでなく、ビタミンAやEも豊富に含まれています。特に注目すべきはβ-クリプトキサンチンという成分で、抗酸化作用や発がん抑制効果が期待されている、健康に良い成分です。

30年以上の歳月をかけた開発

日本の組織的な柑橘育種は、1937年に静岡市清水区興津の農研機構（旧園芸試験場）で始まりました。第二次世界大戦後にはさらに活発化しました。しかし、柑橘の育種には、播種から開花まで8～12年と時間がかかること、多胚性の品種が多くて雑種獲得率が低いこと、遺伝様式の解明が難しいことなど、多くの困難がありました。

そのため、交雑育種と、多胚性柑橘の珠心胚実生から変異を選抜する手法が用いられました。交雑育種では、温州みかんの栽培の容易さ、食べやすさと、スイートオレンジの香りを兼ね備えたタンゴール、さらに大果で良質な肉質のタンゼロの育成が目標でした。

清見は、1949年に早生温州みかんの代表品種である「宮川早生」に、早熟なスイートオレンジの「トロビタオレンジ」の花粉を交配して育成されました。「宮川早生」を種子親に用いたのは、温州みかんの改良と、珠心胚実生の育成を同時に行うためでした。

その後、長期間にわたる試験を経て、1979年に「清見」と命名され、「タンゴール農林1号」として登録されました。その育成から登録まで実に30年以上の歳月を費やしており、これは広域での普及性を慎重に検討した結果です。品種名は、育成地近くの清見寺と清見潟に由来しています。

収穫量と主な産地

2005年の日本の清見の収穫量は20,778トン、2010年は17,692トンでした。愛媛県が45％、和歌山県が32％と、両県で生産量の多くを占めています。佐賀県と広島県もそれぞれ5％を生産しています。

枝変わり品種：星タンゴール（サマー清見）

愛媛県を中心に生産されている清見の枝変わり品種に「星タンゴール」（サマー清見）があります。果皮は黄色で、清見よりも糖度が高く酸味が低いのが特徴です。そのため、より爽やかな味わいが楽しめます。

育種親としての貢献

清見は雄性不稔性で単胚性であるため、雑種の獲得が容易です。そのため、1960年代後半から多くの柑橘類の品種改良に利用されてきました。清見を親とする品種は数多く存在し、「シラヌヒ」、「清峰」、「南風」、「津之香」、「春峰」、「キヨマー」、「天草」、「清の香」、「陽香」、「佐藤の香」、「朱見」、「はるみ」、「あまか」、「西之香」、「師恩の恵」、「せとか」、「せとみ」、「はれひめ」、「広島果研11号」、「麗紅」、「たまみ」、「かんきつ中間母本農8号」、「あまぽん」、「媛小春」、「果のしずく」、「みえ紀南4号」などがあります。これらの品種は、それぞれ清見の特徴を受け継ぎながらも、独自の個性を持つ品種として人気を博しています。

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