済公

済公（さいこう）

済公（1149年 - 1209年）は、南宋時代の臨済宗の僧侶で、道済（どうさい）という戒名を持ちます。彼は戒律に縛られない風狂な人物として知られ、その伝説的な生き様は後世の小説や語り物の題材となり、仏教の枠を超えて民間信仰の対象となりました。済公活仏、済顛、済書記など様々な名で親しまれ、現代の中華圏でも人気を集めています。

実在の人物としての道済

道済については、同時代の記録が多数存在し、実在の人物であったことが確認されています。彼の知人であった居簡の記録によれば、道済は湖隠または方円叟とも呼ばれていました。俗姓は李氏で、天台出身の臨海郡尉・李遵勗の来孫にあたります。彼は霊隠寺で仏海禅師の弟子となり、嘉定2年（1209年）に浄慈寺で亡くなりました。各地を旅し、酒を嗜んだと伝えられています。

道済は早くからその奇行で知られており、没後間もない13世紀の禅僧の語録にも「済顛」として登場します。運庵普巌の語録では、済顛書記が観音大士や達磨大師と並び称されています。天童如浄の語録には済顛を詠んだ詩があり、五百羅漢の生まれ変わりとする伝説の元になったと考えられています。

道済の作とされる詩文は、『浄慈寺志』や『台山梵響』に収録されていますが、これらは清の時代の書物です。

フィクションにおける済公

済公を主人公とした小説で最も古いものは、『銭塘湖隠済顛禅師語録』（済顛語録）です。これは済公の語録という形を取りながらも、内容はフィクションです。

明末から清にかけて、『醉菩提全伝』など多くの小説が書かれました。特に清末に流行した『済公全伝』は、全240回にも及ぶ長編小説で、神魔小説に分類されますが、公案小説や武侠小説の影響も受けています。この小説では、済公は酒や肉を嗜む破戒僧でありながら、神通力を持ち、悪を懲らしめ病人を治す民衆の味方として描かれています。

現代では、中国、香港、台湾で済公を題材とした映画やテレビドラマが多数制作されています。1993年の映画『マッド・モンク 魔界ドラゴンファイター』では、チャウ・シンチーが済公を演じました。

民間信仰の対象としての済公

済公は仏教の枠を超え、道教的な民間信仰の対象としても崇拝されています。済公ゆかりの地とされる杭州市の霊隠寺、浄慈寺、虎跑泉や天台県などには、済公を祀る廟があります。台湾でも済公を祀る寺院が多く、高雄市旗山区の鳳山寺には巨大な済公像があります。また、一貫道でも済公は祀られています。

済公の姿は一定していませんが、多くの場合、だらしない服装で帽子を被り、巨大な数珠を首から下げ、破れた扇や瓢箪を持っています。

日本では、台湾鳳凰山指玄堂釧路分院に済公像が鎮座しています。

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