天童如浄

天童如浄（てんどう にょじょう）は、12世紀後半から13世紀前半にかけて活躍した中国南宋時代の曹洞宗の僧侶です。隆興元年（1163年）に生まれ、紹定元年（1228年）に没しました。俗姓は兪、字は長翁と称しました。明州鄞県葦江（現在の浙江省寧波市）の出身です。

如浄は、洞山良价の法統を受け継ぐ雪竇智鑑に師事し、その法を継承しました。当時の中国禅宗は、臨済宗大慧派が主流でしたが、如浄は名利を求めず、ひたすら禅に打ち込む姿勢を貫いたことで知られています。彼の禅風は、公案を用いた臨済禅とは対照的に、黙照禅と呼ばれるものでした。黙照禅は、言葉や思考を超え、ただひたすらに坐禅に集中することで、内面の静寂と智慧を体得しようとするものです。

嘉定17年（1224年）、如浄は天童山景徳寺の第31世住職に就任しました。この寺で、日本から渡宋してきた道元禅師と出会い、師弟関係を結びました。道元は宝慶元年（1225年）から宝慶3年（1227年）までの間、如浄のもとで禅の修行に励みました。宝慶元年の夏安居の期間中、道元は如浄の指導の下で悟りを開き、如浄から印可を授けられました。

如浄の教えは、道元に大きな影響を与えました。道元は、如浄の教えに従い、権力や名声といった世俗的なものから遠ざかり、当時の仏教界の腐敗を批判し、仏陀本来の精神に立ち返ることを主張しました。帰国後、道元は日本に曹洞宗を開宗し、如浄の教えはその基盤となりました。

如浄の思想や語録は、『如浄禅師語録』にまとめられています。この語録は、曹洞宗の重要な典籍として、今日まで読み継がれています。また、如浄に関する研究書も出版されており、彼の禅思想や道元への影響について、より深く理解することができます。

如浄は、日本曹洞宗の開祖である道元の師として、日本の仏教史においても重要な人物です。彼の禅思想は、道元を通じて日本の禅宗に大きな影響を与え、今日までその流れが受け継がれています。

参考文献
村上重良『日本の宗教』岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、1981年3月。ISBN 4005000274
網野善彦『日本社会の歴史 （中）』岩波書店〈岩波新書〉、1997年7月。ISBN 4-00-430501-2

関連書籍
* 蔭木英雄『凡俗による如浄禅師語録全評釈』大法輪閣、2009年 ISBN 9784804612911

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