大久保利謙

大久保利謙

大久保利謙（1900年1月25日 - 1995年12月31日）は、日本の歴史学者であり、侯爵という華族の身分も有していました。維新の三傑の一人である大久保利通を祖父に持ち、大久保家3代目の当主として生まれました。

人物と業績

東京帝国大学卒業後、近世史をテーマに研究を進めました。当時の歴史学界では、維新後の歴史研究はタブー視されていたため、あえて近世史を選択したと言われています。戦時中は皇国史観に批判的な立場を取り、官学アカデミズムやマルクス主義とは異なる、実証主義に基づいた独自の近代史研究を確立しました。

父の死後、侯爵として貴族院議員を務めました。戦後は歴史学者として、名古屋大学教授、立教大学文学部史学科教授を歴任し、日本近代史学の発展に大きく貢献しました。また、戦後初の国定歴史教科書『くにのあゆみ』の編纂に携わり、小学校用の近現代史部分を執筆しました。

NHKの「日本の戦後」シリーズでは、番組制作にも関与し、第6集「くにのあゆみ 戦後教育の幕あき」では、教科書編纂の様子がドラマとして描かれました。

研究分野は政治史、文化史、教育史と多岐にわたりますが、特に大学史や史学史などの学芸史において顕著な業績を残しました。明治文化研究会に参加し『東京帝国大学五十年史』の編纂に従事した際には教育史・文化史関係を、薩藩史研究会に参加し、重野安繹家文書の調査を通じては史学史の研究を、シーボルト文献の調査を通じ、洋学・蘭学史を研究紹介しました。

戦後、国立国会図書館憲政資料室の開設にあたり、明治の元勲の子孫たちが多く、大久保を通じ資料を提供し、近現代史学研究を開拓発展させたことは特筆されます。

栄典

1929年（昭和4年）1月15日 - 従五位
1935年（昭和10年）2月1日 - 正五位
1943年（昭和18年）2月15日 - 従四位

略年譜

1900年 - 東京市牛込区（現・新宿区）に生まれる
1908年 - 利謙と改名
1926年 - 東京帝国大学文学部国史学科入学
1928年 - 東京帝国大学文学部国史学科卒業
1943年 - 侯爵を襲爵、貴族院侯爵議員に
1949年 - 国立国会図書館憲政資料室主任
1953年 - 名古屋大学教育学部教授
1959年 - 立教大学文学部史学科教授
1965年 - 立教大学教授を定年退職
1993年 - 朝日賞受賞
1995年 - 逝去

家族・親族

大久保家は、祖父に大久保利通、父に大久保利武を持つ家系です。

主な著書

『日本近代文芸』(1939)
『日本近代史学史』(1940)
『日本の大学』(1943)
『森有礼』(1944)
『明治憲法のできるまで』(1956)
『岩倉具視』(1973)
『明六社考』(1976)
『佐幕派論議』(1986)
『大久保利謙歴史著作集』(1986-1993)
『日本近代史学事始め』(1996)

参考文献

『大久保利謙歴史著作集』
『日本近代史学事始め』
『明治が歴史になったとき　史学史としての大久保利謙』
林英夫「「大久保利通関係文書」と「大久保利謙文庫」 追悼の言葉に託して」
* 衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』

大久保利謙は、激動の時代を生きた歴史学者として、その研究と教育を通じて、日本の近代史研究に多大な貢献を果たしました。

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