渡辺寧

渡辺 寧: 日本の電子工学者

渡辺 寧（わたなべ やすし、1896年11月15日 - 1976年11月17日）は、日本を代表する電子工学者であり、東北大学および静岡大学の名誉教授です。茨城県出身の彼は、日本における電子工学の草創期において重要な役割を果たし、特にトランジスタ研究の発展に貢献しました。

経歴

渡辺は、1896年に茨城県で生を受け、1914年に旧制茨城県立太田中学校を卒業します。続けて、1917年に旧制第一高等学校を卒業し、その後、東京帝国大学工学部電気工学科に進学し、1921年に卒業しました。卒業後は、東北帝国大学工学部で講師として教鞭を執り、1922年に助教授、1926年には工学博士の学位を取得します。

彼の博士論文のテーマは「真空管の入力アドミッタンスの研究」でした。また、1929年には教授に昇進し、逓信省電気試験所の技師や海軍技師としても活動するなど、その技術的貢献は多岐にわたりました。特に、海軍技術研究所島田実験所の所長を務め、1952年には東北大学電気通信研究所所長に就任しました。

1956年に東北大学工学部長になった後、1959年には電気学会の会長にも選ばれるなど、学界における地位を固めていきます。1960年には定年退官し、静岡大学の学長に就任。その後も、半導体研究振興会の設立や東北大学学長に選出されるなど、精力的に活動を続けました。1976年に享年80歳で亡くなるまで、多くの後進に影響を与えました。

業績

渡辺は、数多くの技術革新をもたらしました。特に、長距離電話中継用独自の増幅機や水中電話、さらに一つの線路で13局と同時に通話可能な電話機の開発に大きく関与しました。また、PINダイオードの開発においても指導的な役割を担い、これらの技術は当時の通信技術の発展に寄与しました。

人物

私生活では、スポーツを好み、特に野球やゴルフを楽しんでいました。東北大学時代には、教官チームを率いて学生チームとの草野球の試合を行うこともありました。経済面においては厳しい一面があったと言われ、「研究室に金はやらん。やると仕事をしなくなる」との方針を持っていました。これにより、研究室では高価な実験機材を購入することができず、自作することが常となりましたが、結果として独創的な研究成果を挙げることができたとも評価されています。

著書

渡辺は自身の研究成果をまとめた著書も多く残しており、その中には『空間電荷電導論』や『半導体とトランシスタ』などがあります。これらの著作は、電子工学の分野における重要な参考文献として現在も広く利用されています。

顕彰

彼の功績は多数の顕彰によって評価されています。1942年には電気通信学会の功績賞を受賞し、1953年には藍綬褒章、さらに1966年には恩賜発明賞を受賞するなど、日本の科学技術の発展に多大な貢献をしました。1970年には文化功労者に選ばれ、1976年には勲一等瑞宝章を授与されました。

渡辺 寧の業績は、今もなお多くの研究者や技術者に影響を与え続けており、彼の名は日本の電子工学史の中で不滅のものとなっています。

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