渡辺篤 (俳優)

渡辺 篤について

渡辺 篤（わたなべ あつし、1898年4月9日 - 1977年2月27日）は、日本の映画界で活躍した俳優であり、その本名は渡辺 総一（わだなべ そういち）です。彼は浅草オペラからキャリアをスタートさせ、豊かな表情と独特の存在感で「三枚目」として多くの映画に出演しました。特に松竹蒲田撮影所においては短編喜劇映画の主要な役として知られ、名監督の黒澤明とのコラボレーションも多数展開しました。

生い立ち

1898年、東京の浅草区に金物商の子として生まれた渡辺は、幼い頃に父を亡くし、母とともに群馬県へ引っ越します。小学校を卒業後、浅草の小間物問屋で奉公するも、17歳の時に自ら小さな店を開くものの、事業は失敗。その後、役者を目指して東京に再上京し、「百助」という役者専用の化粧品店で働きながら、初めて役者の世界に触れました。

俳優としてのキャリア

1919年に化粧品店を辞め、東花枝一座に参加。渡辺一と名乗り、初舞台を踏んだのち、浅草オペラで石井漠の指導を受け、コーラスボーイを経て「渡辺篤」という芸名をもらいます。1921年に牧野教育映画製作所に入社、映画デビューを果たし、以降は短編喜劇映画に出演し続けます。

短編喜劇からのスターダム

1923年には松竹蒲田撮影所に移籍し、様々な作品で脇役から主演に至るまでのキャリアを積みます。特に短編喜劇において大久保監督や斎藤寅次郎の作品で三枚目の役を多く演じ、聴衆の支持を受けました。1931年には日本初のトーキー映画『マダムと女房』で主役も務め、映像技術の進化と共に進化を遂げました。

戦争と復興

戦中は古川ロッパと共に活動し、戦後はフリーとなってアチャラカ喜劇や時代劇などに出演しました。1950年代からは特に東映時代劇に出演し、月形龍之介や市川右太衛門などの作品に常連として登場します。

黒澤明監督とは多くの作品でタッグを組み、『素晴らしき日曜日』や『どですかでん』などで特に印象深い演技を披露しました。彼の代表作の一つである『どん底』では、深い人生観と人間味あふれるキャラクターを演じ、多くの観客に強い印象を残しました。

私生活と影響

渡辺の娘、巽英子も女優として活躍し、家族に映画界への情熱が引き継がれました。彼の演技に感銘を受けたビートたけしは、自身の息子に『篤』と名付けるなど、多くの後進に影響を与えた人物でもあります。

1977年2月27日、急性肺炎により逝去。その功績は、今なお日本映画界において語り継がれています。彼の多彩な才能と豊かな人間性は、多くの作品を通じて生き続けています。

もう一度検索