渡辺茂 (作曲家)

渡辺茂（わたなべ しげる）

日本の童謡作曲家、教育者。1912年2月1日、栃木県に生まれ、2002年8月2日に没。
「たきび」「ふしぎなポケット」など、数々の童謡を作曲し、日本の音楽教育に大きく貢献しました。
作詞家としては、戸塚一郎、野中十三夫のペンネームを用いていました。

生涯

戸籍上は栃木県出身ですが、幼少期に東京へ移り住み、そこで育ちました。実家は呉服屋を営んでいました。1932年に東京府豊島師範学校（現在の東京学芸大学）を卒業後、教職の道へ進み、都内の公立小学校や東京学芸大学附属竹早小学校で約30年間、音楽教師として教鞭を執りました。

1941年、29歳の時にNHKから作曲の依頼を受け、「たきび」を発表しました。この曲は1952年から現在に至るまで音楽教科書に掲載され続け、彼の代表作となりました。1950年には、作曲家グループ「白濤会」に参加し、山本直忠に作曲を師事しました。

1954年、「ふしぎなポケット」を雑誌『保育ノート』に発表。3年後、小川貴代乃、北野修治の歌でレコード発売され、大ヒットしました。

1963年、東京学芸大学附属竹早小学校教頭に就任。その後、墨田区立横川小学校校長を経て、全小音研（全国小学校音楽研究会）理事、東京都小学校音楽研究会副会長、全日音研（全日本音楽教育研究会）小学部会長など、音楽教育団体の要職を歴任しました。1972年に世田谷区立用賀小学校校長を最後に定年退職。その後、東京学芸大学附属小金井小学校、東京学芸大学、聖徳学園短期大学で非常勤講師を務めました。

小金井小学校では80歳を超えるまで勤務していましたが、これは「たきび」の作曲者という特別な立場だったためでした。学校側から若返りのための退職を求められた際には、大きなショックを受けたといわれています。

1999年には、第1回にっけん小野童謡文化賞を受賞しました。生涯に500曲以上もの作曲を行い、日本の童謡界に多大な功績を残しました。

作曲の際には、ピアノは使わず五線譜に直接書き留め、前奏と伴奏を作る時のみピアノを使用したそうです。エミール・ジャック＝ダルクローズのリトミックに影響を受け、歌いながら手拍子などの身体的動作を伴いやすい作曲を志向していました。また、児童向けの作曲教育にも熱心に取り組みました。

主な作品

たきび （作詞：巽聖歌）
ふしぎなポケット（作詞：まど・みちお）
あくしゅでこんにちは（作詞：まど・みちお）
わからんちゃん（作詞：まど・みちお）(大中恩作曲版もある)
ぶんぶんぶん（チェコ・ボヘミア民謡、作詞：村野四郎、補詞・編曲：渡辺茂）
でんしゃ
かぜと友だち（作詞：小野忠男）
タンタンたんぽぽ（作詞：小野忠男）
たんぽぽのかぞえうた（作詞：小野忠男）
なんの花（作詞：小野忠男）
さくらの花びら（作詞：小野忠男）
かみなりさん（作詞：小野忠男）
おさんぽかたつむり（作詞：小野忠男）
すいれん（作詞：小野忠男）
なつのはな（作詞：小野忠男）
かいすいよく（作詞：小野忠男）
ふうりん（作詞：小野忠男）
りんごのなみだ（作詞：小野忠男）
すきなものなあに（作詞：小野忠男）
あっぷっぷ（作詞：さとうよしみ）

参考文献

島崎篤子「『たきび』の作曲者・渡辺茂の業績―作曲家と教師としての活動に焦点を当てて―」（2016年12月20日、文教大学教育学部紀要50）
にっけん教育出版社「親子で楽しむ童謡集　第１集」（作詞：小野忠男他、作曲：渡辺茂他）（2001年2月15日）

外部リンク

「たきび」の作曲者・渡辺茂の業績 : 作曲家と教師としての活動に焦点を当てて - 文教大学学術リポジトリ
小野忠男コラム、YouTubeメニュー - 渡辺茂作曲の童謡のYouTube映像を掲載

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