山本直忠

山本直忠：生涯と音楽

山本直忠（やまもと なおただ）は、1904年7月22日に東京で生まれ、1965年5月9日に生涯を閉じた、日本の作曲家、指揮者です。彼の音楽は、日本的な旋律と西洋音楽の技法を融合させた点が特徴です。

生い立ちと音楽への目覚め

東京市麹町区（現在の千代田区）で、実業家であり、有島武郎の妹を母に持つ家庭に生まれました。兄がオルガンを演奏していた影響で幼少期から音楽に興味を持ち、幸田延にピアノを師事しました。暁星中学時代には近衛秀麿に師事し、和声学、対位法、作曲、指揮法を学びました。近衛秀麿の外遊中には、山田耕筰にも短期間師事しています。この頃の同級生には、作家の今日出海がいました。

ヨーロッパでの研鑽

1922年に暁星中学を卒業後、父の南米商業視察団の一員として日本を離れました。山田耕筰の紹介状を携えて渡欧し、ドイツのハンブルクで語学学校に通い、ドレスデンではワーグナーの孫の別荘に滞在しながらピアノと作曲理論を学びました。その後、ライプツィヒ国立音楽院に入学し、作曲理論を学び、同級生の齋藤秀雄と親交を深めました。在学中には、『プレリュード・東洋幻想』、『プレリュード・所謂日本式に』、『ロマンス・ある秋の日の思い出』など、ピアノ曲を作曲しました。

帰国後の活動

1931年に帰国後、東京高等音楽専門学校（現在の国立音楽大学）の教師となりました。この時期に教え子の大橋浪江（後のピアニスト）と結婚し、長男の山本直純を授かりました。その後、自由学園の音楽教師や新交響楽団（現在のNHK交響楽団）の指揮者を歴任し、群馬交響楽団の創立にも尽力しました。

宗教音楽への傾倒

1950年にカトリックの洗礼を受け、洗礼名フランシスコを授かりました。晩年は南山大学教授を務める傍ら、宗教音楽の創作をライフワークとしました。グレゴリアン・チャント音楽学会理事長として宗教音楽を研究し、聖イグナチオ教会でオルガンを演奏、また同教会の司祭ヘルマン・ホイヴェルスの作品に基づいたオラトリオ『受難』を発表するなど、宗教音楽の分野でも大きな足跡を残しました。南山大学での教え子である饗庭孝男は、山本を「音楽上の覚醒者」と評しています。

主な作品

彼の作品は多岐にわたり、管弦楽、ピアノ曲、合唱曲、独唱曲、舞台音楽、映画音楽など、幅広いジャンルに及びます。以下に代表的な作品を挙げます。

管弦楽:
『或る秋の思出』（1927年、弦楽合奏）
『森の情景より』（1929年、小管弦楽のためのロベルト・シューマン作品の編曲）
『亜細亜の歌』（1932年、独唱と2管編成）
『青春時代』（1934年）
『春の海』（1936年、箏と2管編成のための宮城道雄作品の編曲）
『朝日さす島』（1938年、7面の箏・混声合唱と2管編成のための宮城道雄との共作）
『日本幻想曲第1番』（1940年、ピアノと3管編成のための作品）
『サンクトゥス（祈聖）』（1941年、ピアノと管弦楽）
『行進曲「堂々たる皇軍入城」』（1942年、2管編成）
『海上日出づ』（1943年、ピアノと2管編成）
『日本幻想曲第2番「望郷」』（1944年、2面の箏と2管編成）
『六段幻想曲』（1946年、2面の箏、ピアノと1管編成）
『春雨』（1946年、2面のこと、ピアノと1管編成）
『千鳥協奏曲』（1946年、ソプラノ、箏、尺八、2～7面の箏合奏と1管編成）
『壮年時代』（1953年、ピアノと3管編成）
『御降誕祭聖歌メドレー』（1959年、クリスマスの歌のメドレー作品）
ピアノ曲:
『ピアノ小曲集』（1925年～1927年）
『変奏曲』（1926年）
『小音詩集』（1930年）
『交響的楽章』（1930年）
『サンクトゥス（祈聖）』（1940年）
『三部曲「静・動・韻」』（1945年）
『愛のノクターン』（1950年）
『レゲンデ第1番』（1950年）
『レゲンデ第2番』（1950年）
『月光の夢』（1950年）
合唱曲:
『アヴェ・マリア』（1922年～1924年、4人の女声独唱、女声4部合唱、ピアノまたは小管弦楽による伴奏）
『海に呼ばうて』（1931年）
『永遠の平和』（1947年、ベートーヴェンの原曲に作曲者による歌詞をつけた独唱と混声合唱）
『皇帝円舞曲「ウィーンの調べ」』（1947年、作曲者による歌詞をつけた独唱と混声合唱）
独唱曲:
『青草』（1930年、三木露風の詩による、ソプラノとピアノまたは管弦楽伴奏）
『ドイツ民謡』（1933年、ソプラノと管弦楽伴奏）
『英国民謡』（1933年、ソプラノと管弦楽伴奏）
『眦はさけて居なん』（1944年、釈迢空の詩による、ソプラノとピアノまたは管弦楽伴奏）
『益良夫』（1945年、作曲者の歌詞による、ソプラノとピアノ伴奏）
『氷れる利根の水上に』（1946年、萩原朔太郎の詩による、歌とピアノ伴奏）
『指と指とを組み合せ』（1946年、萩原朔太郎の詩による、歌とピアノ伴奏）
『夢とカナリヤ』（1947年、河合恒人の詩による、歌とピアノ伴奏）
『あんこう』（1947年、河合恒人の詩による、歌とピアノ伴奏）
『人もし愛を失わば』（1950年、聖書による、独唱または合唱）
『聖フランシスコ・ザベリオの歌』（1950年、作曲者の歌詞による、ソプラノまたはテノール独唱）
舞台音楽:
オペラ『細川ガラシャ夫人』（1940年、ヴィンチェンツォ・チマッティ原曲）
聖楽劇『受難』（1950年、ヘルマン・ホイヴェルスの台本による、オルガン、ピアノと1管編成）
映画音楽:
『飛騨の白川村』（1937年、日本大学藝術学科製作）

参考文献

山本直純『紅いタキシード』（東京書籍、1999年）
楢崎洋子編著『日本の管弦楽作品表1912～1992』（日本交響楽振興財団、1944年）

山本直忠は、その生涯を通じて、日本の音楽界に多大な貢献をしました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、演奏されています。

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