渡邊嘉一

渡邊嘉一（わたなべ かいち）

1858年3月22日（安政5年2月8日） - 1932年12月4日。日本の土木技術者、実業家であり、「日本土木史の父」と呼ばれる人物です。旧姓は宇治橋。

生涯と業績

信濃国上伊那郡平出村（現在の長野県辰野町）で、宇治橋瀬八の次男として誕生しました。開智学校を経て、1877年に上京し、工部大学校（現在の東京大学工学部）に進学しました。在学中に大鳥圭介に見出され、1882年に渡邊忻三の婿養子となります。

1883年に工部大学校を首席で卒業後、工部省鉄道局に勤務しましたが、1884年に退官し英国へ留学。グラスゴー大学で土木工学を学び、1886年に工学士の学位を取得しました。その後、「サー・ジョン・ファウラー及びサー・ベンジャミン・ベイカー工務所」で技師として、フォース鉄道橋の建設工事に携わりました。この時、ジョン・ファウラー、ベンジャミン・ベイカーと共にカンチレバー構造を実演した写真は有名で、スコットランド銀行の20ポンド紙幣にも掲載されています。

1888年に帰国後は、日本土木株式会社に入社し技師部長として活躍。数々の鉄道会社で技師長を務め、鉄橋建設に尽力しました。1897年には、機関車の燃費を向上させる燃焼器を発明し特許を取得。1899年に工学博士号を取得しています。

京阪電気鉄道、東京電気鉄道、奈良電気鉄道、京王電気軌道、北越鉄道、朝鮮中央鉄道、参宮鉄道など、多くの鉄道会社の経営に参画しました。その他、関西瓦斯社長、東京月島鉄工所社長、東洋電機製造社長、東京石川島造船所社長（現IHI）など、様々な企業の要職を歴任。また、帝国鉄道協会会長も務めました。これらの活動を通して、日本の近代化に大きく貢献しました。

家族

実父は宇治橋瀬八で、伊那朝日村平出の名主でした。養父は渡邊忻三です。妻は渡邊忻三の長女よし。

子供は、長女くに、二女久江、三女晴江、四女幸枝、二男哲二、三男渡辺茂蔵、四男渡辺慶三がいます。また、愛人との間に生まれた朝比奈隆は、後に指揮者となりました。

長女のくにの夫は肥田籌一郎（後に離婚）、三女晴江の夫は本間賢介です。二男の哲二の妻の父は三菱製鉄会長の原田鎮治。四男の慶三は姉のくにの養子となっています。

関連会社

渡邊嘉一は、以下の会社の経営に参画しました。

京阪電気鉄道
東京電気鉄道
奈良電気鉄道
京王電気軌道
北越鉄道
朝鮮中央鉄道
参宮鉄道
関西瓦斯
東京月島鉄工所
東洋電機製造
東京石川島造船所（現IHI）

京阪電気鉄道との関わり

特に京阪電気鉄道では、1906年の設立時に初代専務取締役、1910年には初代取締役会長に就任しました。その後も取締役として同社を支え、1931年まで在任しました。また、京阪電気鉄道が出資した大同電力でも監査役を務めています。

死去

1932年、胃癌により亡くなりました。勲五等を授与されています。

参考資料

田島清 編 『信州人物誌』1969年
* 宝月圭吾編 『長野県風土記』 旺文社、1986年

渡邊嘉一は、土木技術者、実業家として日本の近代化に貢献した偉大な人物でした。

もう一度検索